診療案内

胃カメラ

胃カメラは医療機器の中でもよく名前をきく機会のある機器のひとつです。
しかし、名前をきくことはあっても機器そのものについて詳しくは知らないという方も多いのではないでしょうか?

この記事ではそんな胃カメラに関することを解説していきます。

ふじた医院でも新しい胃カメラを導入しましたので胃腸に関する相談もぜひお越しください。アクセスはこちら。

胃カメラの意味とは?

胃カメラを受ける意味とは何でしょうか?
胃カメラを受ける理由は大きく3つに分けられます。

何らかの症状がある場合

みぞおちの痛みがある、胃酸が上がってくる、真っ黒い便が出る(真っ黒い便が出る場合、上部消化管(食道・胃・十二指腸)からの出血の可能性があります)、血液検査で貧血を指摘された、胃透視検査(バリウム検査)で異常を指摘されたなどの症状や、検査での異常がある場合はその原因を調べるためですので、検査を受ける意味は理解しやすいかと思います。

定期検査(もしくは人間ドックや検診)で受ける場合

この場合は症状がないので検査を受けるのをためらわれる方もいらっしゃるかと思います。

ただ、食道・胃・十二指腸のがんは早期であれば内視鏡の治療で切除が可能ですし、根治率も極めて高いです。残念ながらがんができることを完全にふせぐ方法はありません。ただ、症状がなくても定期的に検査を受けていただくことで、がんができても身体への負担が少ない治療で、根治の治療を行うことができる可能性が極めて高くなります。そのためリスクが高い方では、定期的に検査を受けることが重要です。

検査間隔についてですが、よほどリスクが高い方でなければ年に1度程度胃カメラを受けていただければ十分かと思います。

では、いったいどのような方がどのがんのリスクが高いのでしょうか?

  • 喫煙をされている方(禁煙していても喫煙歴が長い方)
  • よくお酒を飲まれる方(特に元々お酒を飲むと顔が赤くなっていた方)
  • 咽頭や喉頭、食道のがんがあった方
  • 広範囲におよびバレット食道(逆流性食道炎にともなう粘膜の変化をきたした食道です)がある方
    →上記のような方は食道がんのリスクがあるので年に1度は胃カメラを受けられることが勧められます。
  • ピロリ菌がいる方(ピロリ菌の治療をして、いなくなった方も含みます)
  • 萎縮性胃炎(ピロリ菌によって起きる胃炎です)がある方
  • 鳥肌胃炎がある(あった)方
  • 胃透視検査(バリウム検査)で慢性胃炎を指摘されている方
    →上記のような方は胃がんのリスクがあるので年に1度は胃カメラを受けられることが勧められます。

ポリープなどがあり、経過観察の目的で検査を受ける場合

元々ポリープなどの異常を指摘されており、すぐに治療をする必要はないものですが、大きさや性状の変化がないか経過観察が必要な場合です。こちらも基本的には症状がないので検査を受けるのをためらわれる方もいらっしゃるかと思います。

食道や胃、十二指腸の粘膜下腫瘍(消化管の壁の中にできる腫瘍です)やポリープといったものが当てはまるかと思います。これらは大きさや性状などによって経過観察だけでいいのか、さらに詳しい検査や治療が必要になるのかを判断することになります。

胃カメラの主な意味はまとめると

  1. 症状がある方ではその原因を調べて適切な治療を行えるようにする
  2. がんなどの治療が必要な病変を早期に発見して適切な治療を行えるようにする
  3. 指摘されいてる病変に変化がないかを経過観察する

の3つになります。

胃カメラでできること

この記事では分かりやすいように「胃カメラ」といっていますが、正式には「上部消化管内視鏡検査」といいます。

上部消化管とは口から十二指腸までのことで、胃カメラでは胃だけでなく、のど(咽頭・喉頭)から、食道・胃・十二指腸までを観察することができます。

粘膜の色の変化や凹凸など性状を直接観察できるので、多くの情報を得ることができ、がんの早期発見にとても有効です。

また、異常所見があった場合、生検(組織の一部を取ってくる検査)を行うことで確定診断をつけることができます。

胃カメラの楽な受け方のコツ

胃カメラをできるだけに楽に、また安全かつ速やかに終えるためのコツをご説明します。

胃カメラを受けるとなると緊張されるとは思いますが、できるだけリラックスして体の力を抜くようにお願いします。のどの緊張が強いと、のどから食道に入りにくく、検査後にのどの痛みが出ることがあります。

つぎに体勢などでお願いしたいことを記載していきます。

体勢は常に横向きで、右脚を左脚の前に出すようにしておいてください。

最初はあごを突き出すようにしておいていただいて、カメラの先端が食道内まで進んだら、今度はあごを引くようにお願いします。

カメラが食道に入る際にはできるだけ力を抜いてください。力を抜くのが難しい場合には大きな飴玉を飲み込むような感じで、カメラを飲み込んであげてください。

カメラの先端が食道に入った後はできるだけ力を抜いて楽にしておいてもらえればけっこうです。ただ、げっぷだけ極力我慢いただくようにお願いいたします。げっぷを我慢いただければ胃の中の観察がスムーズに進み、検査時間自体も短くなります。

検査中はつばや上がってきた胃液などはすべて自然に口から垂れ流すようにお願いいたします。飲み込むと気管に入り、むせたり、肺炎を起こすおそれがあります。

これらの内容はすべて検査時にこちらからお声かけさせていただきますのでご安心ください。

胃カメラを楽に受けるコツを記載させていただきましたが、一番楽に受けられる方法は検査時に麻酔薬を使うことだと思います。適切に麻酔薬を投与することで、ほとんどの方が極めて楽に検査を受けていただくことが可能です。

当院では希望される方には麻酔薬を用いて検査を行っていますが、検査を受けたことを覚えていらっしゃらない方が多いです。検査結果の説明をするために診察室に入っていただいた際に「これから胃カメラですか?」とおっしゃられることがよくあります。

ただ、麻酔薬を使用するとその日は車などの乗り物の運転や、高所での作業などはできませんのでご了承ください。

当院の胃カメラ検査の特徴

特徴1. 内視鏡専門医・指導医による安全な検査

経験豊富な内視鏡の専門医・指導医がすべての検査を行っています。苦痛や不快感を起こさないよう配慮しながら緻密に検査を行うことで、安全性も高めています。検査は短時間のうちに終わるので、お体のご負担も少なく、楽に受けていただけます。

特徴2. 最新の内視鏡システムを導入

内視鏡専門医・指導医の高い技術レベルを検査に反映できるよう、最新鋭内視鏡システムを導入しています。

内視鏡分野で世界をリードしてきたオリンパス社の内視鏡システムは、微細な病変を短時間に発見することができます。また、極細の内視鏡スコープは手元の繊細な操作を先端まで正確に伝えるため、よりご負担の少ない検査が可能です。

NBI

毛細血管や微細な差異を強調できる特殊な青と緑の光を照射して観察できるため、通常光による観察に比べより微細な病変の早期発見につながります。特に、毛細血管を集めやすい早期の胃がん発見には高い有効性を持っています。

ハイビジョンモニター

検査中の画像は、高精細で大きなハイビジョンモニターで確認しています。これによって、ちょっとした差異を一目で発見でき、見落としを防いでいます。

また、このモニターは反射や映り込みがないため位置を変えても画像が見づらくなることがなく、医師が動きを制限されないため、患者様にかかるご負担をより軽減できる検査が可能になります。

特徴3. 鎮静剤を使用して痛みを抑えた検査

胃カメラ検査に関しては、以前につらい思いをされたなど苦手意識を持っている方が少なくありません。

また、ご不安があって内視鏡検査を躊躇されているうちに病気を進行させてしまうケースもよくあります。

当院では、こうした方が安心して検査を受けられるよう、軽い鎮静剤を用いる無痛内視鏡検査も行っています。ウトウト眠っているような状態で検査を受けられますので、お身体もリラックスした状態になって余計な力が入らないため、より安全でスピーディな検査が可能になります。

特徴5. 検査ごとに、徹底消毒で感染予防

当院では院内や医療機器の清潔を重要視しており、医療機器の洗浄・滅菌・消毒も徹底的に行っています。

内視鏡機器に関しても、日本消化器内視鏡学会のガイドラインに沿って完全な消毒を行っており、患者様ごとに専用の内視鏡洗浄器で洗浄・消毒を行った清潔な機器を使っておりますので、安心して検査を受けていただけます。

当院の胃カメラ検査の流れ

Step1. 検査前日

前日は、夜までは普段通りにお過ごしください。夕食は軽めのメニューで、21時までにすませます。それ以降の飲食は避けます。水分補給として透明で糖分を含まない水や薄いお茶などを多少とっていただくのはかまいません。

Step2. 検査当日

当日の朝

朝食はとらずにいらしてください。脱水にならないよう水分は補給してください。喫煙もしないでください。
普段、お薬を飲まれている方は、ご予約の際にご相談いただき、その時に受けた事前の指示に従って休薬・服薬してください。

ご来院

予約時間までに受付をすませ、個室の検査室にお入りいただきます。
気になることがありましたら、お気軽に医師やスタッフにご質問ください。

Step3. 胃カメラ検査

当院では、鼻から挿入する経鼻検査と、口から挿入する経口検査からお選びいただいて検査を行っています。

経鼻検査は楽に受けられますし、検査中の会話も可能です。また、モニターを見ながら気になることを医師に質問することもできます。

経口検査は触れるとオエっとする舌の根本にスコープが当たるため、鎮静剤で苦痛なく受けられる無痛検査も行っています。

Step4. 検査後

検査終了後は、リカバリールームで少しお休みいただき、その後飲食が可能になります。最初は少量の水を飲んで、むせるなどがないかを確かめてください。

少量の水がうまく飲めなかった場合には、30分以上経ってから再び少量の水を飲んで確かめます。気分が悪いなど体調に変化がある場合はすぐにスタッフまでお伝えください。

Step5. 検査結果のご説明

しばらくお休みいただいてから、検査結果のご説明となります。検査を担当した専門医・指導医が検査画像を用いながら、わかりやすく結果をお伝えしています。

検査で組織の採取を行った場合、生検の結果が出るまでに10日程度かかりますので、再度いらしていただいて結果のご説明を行います。

ピロリ菌感染の有無を調べる検査でも組織採取と検査が必要ですから、後日改めてご来院いただいて結果をお伝えしています。

検査室に入ったら

さあ、いよいよ本番です。
この項では、鎮静剤を使わずに、嘔吐反射が起きにくい「鼻からの胃カメラ」を受けることを想定して書いていきます。

まずは、落ち着きましょう。検査前には大きく深呼吸をしてみましょう。胸郭を大きく膨らませることで緊張が和らぎます。

施設によってやり方が若干異なりますが、喉の麻酔や、鼻の麻酔が行われると思います。すべて医師や看護師の言う通りにこなしていきましょう。

検査時間は5分程度です。患者さんの緊張をほぐすため、医師から「検査前の声掛け」があります。検査中、看護師が背中をさすってくれたりします。熟達した施設ほどそのようなマネージメントが上手です。

通常の検査では、「喉→食道→十二指腸→胃→スコープを抜きながらもう一度、食道」の順番に検査を行います。最初の「喉(ノド)」が最大の難所となります。違和感を感じると思いますが、慌てないのが一番です。

検査中、胃カメラを上手に飲むコツは、次の5つです。

全部できなくても大丈夫です。できることだけやってみましょう。

  1. リラックスする。肩の力を抜く。

    検査台に乗ったら、リラックスして、特に肩の力を抜きましょう。

  2. 検査直前に 大きく深呼吸する。鼻から吸って口から吐く。3回程度やってみましょう。

    息は、鼻からゆっくり吸って、口から「ハー」と吐いてください。大きく吸って、大きく吐くのがコツです。

  3. 検査中、唾液は飲み込まない。

    検査中、唾液は飲み込まないで、ダラダラと口の外に出してください。

  4. 検査中、目を閉じない。

    検査中は目を閉じないで、遠くを見つめる感じでいてください。目を閉じてしまうと、意識がどうしても咽頭に集中してしまい、オエッとなりやすくなってしまいます。また、目を開けておけば視覚が遮られないので、パニックになりにくくなります。

  5. 終盤はげっぷを我慢。

検査の中盤以降、胃の観察で、カメラから送気して胃を膨らませます。少しお腹が張った感じになりますが、1~2分程度なのでなるべくげっぷを我慢してください。うまく我慢できると検査が早く終わります。

胃カメラ検査を受けるタイミングとは

早期の胃がんは自覚症状を起こすことがほとんどなく、症状に気付いた時点でかなり進行しているケースがよくあります。そのため、リスクが上昇しはじめる40歳になったら、定期的に内視鏡検査を受けることが重要です。

内視鏡検査では粘膜を直接観察できますし、疑わしい部分の組織を採取して確定診断も可能です。早期がん発見だけでなく、前がん病変やピロリ菌感染の有無なども調べることができるため、胃がん予防にもつなげることができます。

特にオススメするのは以下の方です。

  • 40歳以降で、まだ一度も内視鏡検査を受けたことがない方
  • タバコやお酒をたしなむ方
  • 親族に胃がんやピロリ菌に感染した人がいる方

上記に当てはまらなくても、胃痛や胃の不快感などの症状が出ている方は一度検査を受けましょう。当院では、内視鏡専門医・指導医による安全で苦痛を抑えた検査を行っています。お気軽にご相談ください。

胃カメラで見つかる疾患

  • 咽頭

    咽頭ポリープ、咽頭がん、粘膜下腫瘍、咽喉頭酸逆流症、壁下性圧排、など

  • 食道

    裂肛ヘルニア、バレット食道、食道がん、逆流性食道炎、食道びらん、など

  • 胃炎、胃潰瘍、萎縮性胃炎、胃ポリープ、胃アニサキス症、胃がん、急性胃粘膜障害、ピロリ菌、など

  • 十二指腸

    十二指腸炎、十二指腸潰瘍、十二指腸がん、など

  • 胃の症状と胃がん

    最近では胃の不快感を抑えるための市販薬が多く出回っていますが、医療機関を受診するタイミングが遅れてしまい、病気の進行を見逃してしまうケースがあります。胃の不調や不快感などがある場合は、専門医を受診しましょう。

    特に、胃がんなどの深刻な疾患は、初期には自覚症状がない場合があります。症状に気付いたら、胃粘膜の状態を調べ、ピロリ菌の感染の有無を調べましょう。

    ピロリ菌の感染を放置したままにしておくと、胃炎を繰り返すほか、胃がんを発症する恐れがあります。胃粘膜の状態を正確に観察し、ヘリコバクターピロリ菌の感染がないかどうかを確かめることは将来の胃がん予防につながります。

食道

食道がん

食道がんは、喫煙者やアルコール摂取者に多いとされ、進行がんになるまでほとんど自覚症状がありません。

また、胃や大腸には一番外側に漿膜(しょうまく)という膜がありますが、食道にはそれがないため、リンパ節やほかの臓器への転移が起こりやすい傾向があります。

さらに、食道の外科的手術は難易度が高く、身体への負担も大きいため、できるだけ早期発見が重要になってきます。
早期食道がんであれば内視鏡治療で根治することが可能です。

胃カメラを受けることで、食道や咽頭も詳細に調べられますので、定期的な検査をおすすめします。

食道胃接合部がん

食道と胃の境目を食道胃接合部と呼び、その上下2cmの範囲にがんの中心部があるものを食道胃接合部がんといいます。従来は、食道がんもしくは胃がんとして分類されていた病気であり、食道胃接合部がんとして独立した病気としてのデータは充分ではありません。

欧米では以前から多く見つかっており、日本でも、食道がんや胃がんに比べて頻度は低いものの、最近増加傾向にあります。以前はがんの部位(食道、胃のどちらがメインか)や病理組織(食道と胃のどちらの細胞からがん発生しているか)によって「食道がん」もしくは「胃がん」と決めた上で治療されてきました。

しかし、リンパ節への転移の広がり方は、食道がん・胃がんのいずれであるかよりも発生した場所に左右されるため、食道がん・胃がんのどちらかを決めて、その疾患の型どおりの手術を行うという考え方では整理がつかなくなってきました。

そこで最近では単純に「食道がん」もしくは「胃がん」とせずに「食道胃接合部がん」という独立した疾患となりつつあります。
本例は50歳代の男性で、自覚症状はありませんでした。内視鏡治療は適応外のため、外科へ紹介となりました。

逆流性食道炎・食道裂孔ヘルニア

胃には胃酸から粘膜を守るメカニズムを備えていますが、食道にはそれがありません。

そのため、胃液の逆流が起こると食道は炎症を起こしてしまいます。これが逆流性食道炎です。食道裂孔ヘルニアは、本来腹部にあるべき胃の一部が食道のある胸部に飛び出してしまっている状態です。

食道裂孔ヘルニアになると胃液の逆流が起こりやすくなります。

逆流が起こると、炎症にともなう胸やけ、むかつき、胸部の痛み、咳、喉の違和感、喉が詰まった感じがする、声がれ、睡眠障害などの様々な症状がおこります。

長期間の炎症により食道腺がんのリスクが高まるため、適切な治療が重要になってきます。重症の場合は食道は狭くなり食事が通過しなくなることがあります。写真は軽度のものと重症で狭窄を伴ったものとそれぞれ掲載しています。

逆流性食道炎の原因は、食道裂孔ヘルニアだけでなく食道や胃の蠕動運動の低下、肥満や加齢などの要因によって起こります。
そのため、治療には胃酸を抑える薬に加え、肥満や食生活の改善することも大切です。

食道静脈瘤

長期間による肝臓の炎症によって肝硬変となった方にできる病気です。

肝硬変では肝臓へ血液が流れにくくなり、その分が食道に流れ込んで静脈瘤(血管のこぶ)ができます。

瘤が大きくなって破裂すると吐血となり命にかかわるため、早期発見と治療がとても重要な疾患です。
治療は内視鏡でできることがほとんどです。

静脈瘤がみつかった場合は定期的な肝臓のチェックと胃カメラ検査が重要となります。

食道異物・咽頭異物

魚の骨、薬のシート(PTP)、ボタン電池などがあります。とがっているため、放置すれば食道や腸に穴を開けてしまう可能性があります。

また電池などは漏れ出た液により腸などに強い炎症を起こし穴があくこともあり早急に内視鏡専門医を受診して異物を取り除く必要があります。

食道乳頭腫

白い小さな隆起ができる良性の腫瘍です。胃酸の逆流によって起こるとみられています。経過観察で可能なことがほとんどです。

食道粘膜下腫瘍

粘膜表面にできる食道がんと違い、粘膜より深い層に発生する腫瘍です。悪性のことは少なく、大部分は良性腫瘍である平滑筋腫や血管腫です。

ただ、腫瘍が大きい場合や短期間で腫瘍が大きくなることがあると、悪性腫瘍の可能性があります。そのため、食道粘膜下腫瘍が見つかった場合には、腫瘍の大きさや形態をしっかり経過観察していく必要があります。

好酸球性食道炎

食道のつまり感や嚥下困難などの食道症状があり、内視鏡による生検で食道上皮内好酸球が高視野で15個以上浸潤している慢性アレルギー疾患です。

わが国では稀な疾患とされてきましたが、近年、その報告数が増加してきています。臨床的には中年、男性に多く、約半数にアレルギー疾患を認めます。

診断の契機となる症状として、食物つまり感や嚥下困難が最も多いですが、胸痛、胸焼け、胃痛などの症状を呈する場合もありますので、標準治療に反応しない症例では鑑別すべき疾患のひとつとして常に挙げるべきです。

内視鏡検査では、縦走溝やリング、白斑、狭窄など特徴的な所見がみられますが、感度、陽性的中率は低いので、生検が必須です。

当院での症例写真です。リング(輪状溝)と白斑を認めます。診断確定とカンジダ除外目的のため生検を施行したところ、内視鏡生検で好酸球20/HPFでした。

早期胃がん

胃がんは胃の粘膜表面から発生します。初期の段階では粘膜内にとどまっていますが、大きくなるにしたがって次第に粘膜下層、筋層、漿膜下層へ進みます。進行部分がどの深さまで達しているかを腫瘍の「深達度」と呼んでおり、T1からT4までの4段階に分類されます。

がんが粘膜または粘膜下層にとどまっている状態はT1と分類され、転移の可能性がほとんどないため、早期胃がんと呼んでいます。

早期胃がんの中でも特に粘膜表面にとどまっている場合には手術ではなく胃カメラによる内視鏡治療で根治が可能です。

早期がんは検診目的でうけた内視鏡検査で発見されることが多く、ほぼ無症状です。胃がんはかなり進行してからでも軽い胃炎のような症状しかでないことが多いので、早期に胃がんを発見するためには定期的な内視鏡検査が重要となります。

進行胃がん

胃がんは時間とともに粘膜表面から深く浸潤していき、さらに進行すると肝臓やリンパ節へ転移していきます。進行胃がんは内視鏡では治療できないため、開腹による外科手術や抗がん剤などが必要になります。

進行胃がんの段階まで進んでも自覚症状がないこともあります。そのため、健診などで受けた胃カメラで進行がんがみつかることがあります。

スキルス胃がん

通常の胃がんと異なり、がん細胞が胃の粘膜の下にばらばらに広がっていくタイプの胃がんです。転移を起こしやすく、進行が早いという特徴を持っています。また、発症が多いのは30~50歳であり、比較的若い世代に多くなっています。

進行が早いため治療が進んできた現在でも死亡率が高く、また無症状なケースもあり、早期発見が難しい疾患です。リスクの高い方は若いうちから定期的に内視鏡検査を受け、ピロリ菌に感染していたら除菌治療を受けることをお勧めします。

内視鏡専門医でも経験することが少ない疾患です。写真は当院で診断した50代の症例で、病理結果は印環細胞癌でした。

胃腺腫

胃の粘膜に発生した良性の腫瘍であり、すぐに胃がんとなることは多くありませんが、数年間経過するとがん化するとされているため、定期的な経過観察が重要です。また形態や大きさによってがんが含まれる可能性が高い場合には内視鏡による切除を行います。

胃カメラ時には生検(組織を採取)して病理検査を行い、胃がんと鑑別することが重要です。

ピロリ菌

胃に住む細菌で、日本人の1/2が感染しています(高齢者に多く、若者には少ない)。胃カメラ検査で、ピロリ菌の有無を調べることができます。

ピロリ菌感染がない方は胃がんになりにくく、一方でピロリ菌感染がある、または以前に感染していた方は胃がんリスクが高くなります。

そのため、ピロリ菌感染がわかったら、除菌治療を受けた上で、定期的な胃カメラ検査を受けて胃がんがないかを確かめることが重要になります。

胃潰瘍

代表的な症状は胃痛です。

原因はピロリ菌や鎮痛解熱剤をたくさん使用することによって起こります。ストレスで発生することもあります。

胃の粘膜が傷付いて、深いところまで組織がなくなっている状態です。

放置すれば多量出血や胃に穴があくことがあり、治療は必須です。

胃がんと鑑別することも重要です。ピロリ菌感染がある場合、除菌治療を行うことで胃潰瘍の治療および再発防止につながります。

脳梗塞予防や狭心症・心筋梗塞予防の薬の中には胃潰瘍の原因となるものがあり、それらの薬の継続が必要な場合は胃薬とセットで飲むことが大切です。

出血性胃潰瘍

胃潰瘍を治療せずに放置すると悪化し、出血(吐血や下血)や穿孔(穴があくこと)を合併することがあります。緊急で対処する必要があります。写真は暗赤色便を主訴に受診された症例で内視鏡的止血処置(クリップ止血)を行いました。

表層性胃炎、急性胃炎(AGML)

胃粘膜表面に炎症が起こっている状態です。暴飲暴食やストレス、薬剤などが原因とされています。胃酸過多の治療とともに、食生活・生活習慣の改善も重要です。

萎縮性胃炎

ピロリ菌が原因です。ピロリ菌に感染すると慢性的な炎症が続き、粘膜が萎縮し、胃がんのリスクが高まります。萎縮が高度に進行するとピロリ菌すら生息できなくなり、検査ではピロリ菌陰性と出ることがあります。

ただし、以前はピロリ菌に感染していて、萎縮性胃炎の進行によりピロリ菌陰性になった状態は、胃がんリスクが最も高く注意が必要です。

萎縮性胃炎の治療は、ピロリ菌の有無を調べ、除菌することです。また胃カメラを定期的に受けて胃がんの合併がないかチェックすることが大切です。

鳥肌胃炎

胃の炎症のひとつです。鳥肌のように見えることからこの病名がついています。

ピロリ菌感染とのつながりが指摘されており、胃がんの中でも進行の早いスキルス胃がんにもかかわっているとされているなど、胃がんリスクが高い炎症です。ピロリ菌が陽性であれば除菌治療が有効です。

胃がんのリスクを考え、定期的な胃カメラが重要です。

胃底腺ポリープ

良性のポリープです。ピロリ菌に感染していない健康な胃にできやすく、女性ホルモンとの関連性が指摘されています。

悪性化する可能性は低いため治療不要ですが、定期的に個数や大きさなど変化がないか定期的に胃カメラをおすすめします。

胃過形成性ポリープ

胃底腺ポリープと異なり、ピロリ菌が関係していることが多いです。除菌により消失することもあります。

サイズが大きいものや形状によっては内視鏡切除による治療が必要な場合があります。

胃アニサキス症

サバ、イカ、サケ、アジ、タラ、カツオなどにアニサキス(寄生虫の一種)が寄生しており、それらを生で食べることにより、感染して起こります。冷凍や加熱によって死滅するため感染予防に重要です。肉眼で見える程度の大きさのため、適切な処置が行われていれば生食しても感染するリスクはほとんどありません。

感染すると、胃に強い痛みが現れます。人間の体内ではアニサキスは生き続けることはできないため、いずれ痛みは治まりますが、かなりの激痛となる場合もあります。

治療は内視鏡によるアニサキスの虫体を除去することです。生魚を食べたあとに胃に強い痛みが起こったら、内視鏡専門医を受診してください。

当院では専門医である院長が緊急で内視鏡を行い除去いたします。

胃静脈瘤

長期間による肝臓の炎症によって肝硬変となった方にできる病気です。

肝硬変では肝臓へ血液が流れにくくなり、その分が胃に流れ込んで静脈瘤(血管のこぶ)ができます。

瘤が大きくなって破裂すると吐血や下血となり命にかかわるため、早期発見と治療がとても重要な疾患です。

治療は内視鏡でできることがほとんどです。静脈瘤がみつかった場合は定期的な肝臓のチェックと胃カメラ検査が重要となります。

胃粘膜下腫瘍

通常の胃がんとは異なり、粘膜より深い層にできる腫瘍です。胃カメラでは粘膜が盛り上がっているように見えます。

サイズが小さい場合は良性であることがほとんどであり、定期的な経過観察で変化がないかをみていきます。サイズが大きいものや形状によっては悪性腫瘍(胃GIST(消化管間質腫瘍))の場合があり、その際には外科手術や抗がん剤治療が必要になります。

胃憩室

憩室はポケット状に外側に飛び出たもので、胃の筋層が弱い部分に発生します。胃カメラ検査ではくぼみとして観察されます。良性のため治療は不要です。

憩室による症状はなく、検査時に偶然見つかることがほとんどですが、稀に出血などの原因となることがあります。

胃カルチノイド/胃NET・神経内分泌腫瘍(NEN)

稀な疾患で、直訳すると「癌に似た」となります。このことから「癌もどき」と表現することもあります。カルチノイドは人体に広く分布する神経内分泌細胞からできる腫瘍です。

発生部は胃、十二指腸、小腸、虫垂、大腸などの消化管、膵臓などです。この神経内分泌腫瘍は悪性腫瘍に比べ進行がゆっくりで予後が悪いことは少ないと考えられています(大きさ、発生部位、病理型等により異なります)。

消化管カルチノイドは直腸に多く(55.7%)、次いで十二指腸や胃に多くみられます。胃腫瘍のうち0.4%がカルチノイドと報告されており、最近は検診などの内視鏡により無症状で発見されることもあります。

本例は70歳代女性、胃体中部小弯に6~7mmの半球状隆起で、頂部に拡張した血管が観察されます。病理結果はNET G1で最も悪性度が低いものでした。10mm未満であり、内視鏡治療目的で消化器内科に紹介しました。

十二指腸

十二指腸がん

初期(早期)のがんならば内視鏡治療で完治させることも可能です。

十二指腸潰瘍

胃潰瘍と同様に、十二指腸の粘膜が傷ついて潰瘍化し、ほとんどのケースで腹痛を生じます。放置すれば多量出血や穴があくことがあり、治療することが大切です。

原因ではピロリ菌感染が多く、若い方にも多い疾患です。治療はピロリ菌感染の有無を調べ、感染がわかったら除菌治療を行います。また胃酸を抑える薬が必要となります。

十二指腸腺腫

十二指腸腫瘍は比較的まれな消化管腫瘍のひとつです。

最深部の十二指腸までしっかりと検査することにより、発見される機会が徐々に増えています。腺腫のような良性の腫瘍から、癌のような悪性腫瘍もあります。

腺腫や比較的早期癌と考えられる腫瘍には内視鏡での切除が可能な場合があります。

しかし、腺腫や早期癌であっても広がりが広範囲に及ぶ場合や、進行した癌と診断された場合は手術が必要となってきます。

IgA血管炎(ヘノッホ・シェーライン紫斑病)

IgA血管炎は、皮膚に紫斑(皮内出血による紫~赤色の斑点)を認め、同時に関節炎、腹痛、腎炎などを伴う珍しい疾患です。10歳以下の小児に発症することが多く、成人には稀です。

以前はヘノッホ・シェーンライン紫斑病(アレルギー性紫斑病)と呼ばれていましたが2012年に変更されました。

原因は不明ですが、感染や薬剤などが誘因と考えられ、免疫のシステムが働いた時に形成された物質が、毛細血管などの小さな血管の壁に付着することのより細い動脈などが炎症を起こし発症すると考えられています。

尿検査では尿蛋白を認め、時に重篤な腎炎(ネフローゼ等)に進行する場合があります。

多くの場合、自然に軽快するため、定期診察と尿検査を行い、対処療法を行います。ステロイドの治療は、腹痛の持続時間を短くする、重積のリスクを減らす、腎病変の発症のリスクを減らすとの報告があり、強い腹部症状、腎症状を認めた場合、ステロイド剤を使用する場合が多いです。

当院での症例は腹痛を主訴に受診、内視鏡検査にて十二指腸下行脚~水平脚に多発潰瘍を認め、部位の特徴から本疾患を疑い、改めて診察すると下肢に多数の紫斑を認め、診断に至りました。

咽頭

咽頭腫瘍

咽頭は通常胃カメラの際、観察しない施設も多いですが、当院では経鼻挿入や静脈麻酔併用時などはできる限り観察するように努めております。

写真は当院で発見した下咽頭腫瘍の症例です。下咽頭に発生する腫瘍の大部分は扁平上皮癌で良性腫瘍は比較的少ないです。

下咽頭癌は頭頸部癌の内10%余りを占める癌で最近は徐々に増加傾向を示しています。発癌には喫煙・飲酒の習慣が大きく関与しているといわれています。

よくある質問

Q:胃カメラ検査は保険が適用されますか?

A:胃や食道に症状が認められれば保険が適用されます。胃カメラ検査において保険適用される方は多くいらっしゃいますが、不安な方は一度事前に診察を受けてください。

Q:「おえっ」としますか?

A:胃カメラ検査の際には鎮静剤を使用するため、眠っている間に検査が終わり「おえっ」とする(咽頭反射)ことは基本的にはありません。

Q:鼻から胃カメラ検査を受けることはできますか?

A:当院では鼻から胃カメラ検査(経鼻内視鏡検査)を行うことは可能ですが、眠っている間に終わる口からの胃カメラ検査を推奨しています。また実際に大半の患者様が鼻からできる胃カメラ検査よりも眠って終わる口からの胃カメラ検査を希望されています。

問診票の質問内容の意味について

胃カメラの問診票でよくある問診内容で意味の分かりにくいものについて解説します。

Q:「緑内障、前立腺肥大、不整脈、心臓の病気、糖尿病、褐色細胞腫はないですか?」という質問はどんな意味がありますか?

A:緑内障、前立腺肥大、不整脈、心臓の病気があると、鎮痙薬のブチルスコポラミン臭化物が使えない場合があります。
糖尿病、褐色細胞腫(カテコラミンというホルモンを産生して高血圧や糖尿病などをきたす腫瘍です)があると鎮痙薬のグルカゴンが使えない場合があります。
緑内障があると鎮静剤のミダゾラムが使えない場合があります。
上記の病気がおありでも、病気の程度や種類によっては使用できる場合もありますが、確認が必要になりますので問診票でお尋ねさせていただいています。

Q:「エイズ(HIV)の治療の薬、麻薬系の強力な痛み止め、てんかんの治療の薬を使用していませんか?」という質問はどんな意味がありますか?

A:エイズ(HIV)の治療の薬の中のプロテアーゼ阻害薬という種類のものを使用していると、鎮静剤であるミダゾラムが使用できない場合があります。
麻薬系の強力な痛み止めを使用していると、鎮痛剤であるペンタゾシンが使用できない場合があります。
てんかんの治療のお薬を使用していると、ミダゾラムという薬の拮抗薬であるフルマゼニル(アネキセート®)を使用できない場合があります。

検査後の注意事項の意味について

検査後の注意事項を記載させていただきます。

検査終了後1時間たってから、水を少し飲んでむせがないことを確かめて食事をとるようにしてください。

Q:なんで一時間待たないといけないの?

A:のどの麻酔が切れる目安が一時間程度になるためです。のどの麻酔が切れる前に水分を飲んだり、食事をとったりすると気管に入り肺炎を起こすおそれがあります。検査のためにご飯をぬいていただいているので早く食事をとりたいとは思いますが、安全のために少しだけ食事はお待ちください。
検査後に口の中が気持ち悪い場合は、下を向いてぐちゅぐちゅとうがいをしていただくことは可能です。

麻酔薬を使用した場合にはその日は車などの乗り物の運転や、高所での作業などはなさらないようにしてください。

Q:麻酔がさめた後にも運転はできないの?

A:検査後に麻酔がある程度さめるまで30分~1時間程度院内で休んでいただきます。ただ、その後でもふらつきが残る場合がありますし、一旦麻酔が切れたと思った後でもまた眠たくなることがあります。事故を避けるため、よろしくお願いいたします。

生検(組織の一部をつまみとって病理検査に出すこと)を行った場合は、まれに出血をすることがありますので、ふらつきなどの貧血の症状や真っ黒い便が出る場合にはご連絡ください。

Q:どんな場合に連絡したらいいの?

A:生検をすると、少し血が出ますが、ほとんどの方ですぐに血が止まります。私は8,000件以上の胃カメラを行ってきましたが、生検による出血が持続して処置が必要になったことはありません。

出血が持続する場合の症状としては

  • 貧血症状→ふらつく、動悸がする、気が遠くなる感じがする、下まぶたの赤みがなくなる
  • 出血の兆候→吐血する、真っ黒い便が出る

というものがあります。生検時の少量の出血だけでは上記のような症状は出ないので、これらの症状がある場合はすぐにご連絡ください。

今回の記事を読んでいただくことで胃カメラへのご理解が深まったでしょうか?
本記事が胃カメラを受ける不安の解消に少しでもお役立ちできれば幸いです。

前日の食事について

胃カメラの予約時に、看護師から詳細な説明があります。
要点は以下の通りです。

前日の夕食は、遅くても夜9時には済ませてください。

当院では前日の食事の内容は制限しておりません。あまりに油っぽいラーメンや中華料理などは避けてください。
検査当日は、朝食を摂らずに来院してください。

その他、内服薬などがある場合は、胃カメラを受ける施設にお問い合わせください。

気になる痛みや症状があったらお気軽にご相談ください

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