病気解説
消化器内科
下腹部痛
下腹部痛とは、文字通り下腹部が痛むことをいいます。
日常生活を送るなかで、下腹部に痛みを感じた経験は誰にでもあるでしょう。
原因としては、ストレスによる胃痛や暴飲暴食による下痢、室内と屋外の温度差によって起こる体調不良などがありますが、それだけでもないのが下腹部痛の原因です。
下腹部痛と言っても色々な原因や症状があるので、ご自身で見極めが難しいときは医療機関で受診してください。ふじた医院はこちら。
この記事では、下腹部痛に関して考えられる病名や原因などを解説していきます。
下腹部痛が起こった時は
下腹部の痛みは、比較的よく起こるがゆえに我慢してしまう人が多いですが、原因によってはそのままにしておいてはいけない場合があります。
下腹部の痛みの多くは腸疾患・尿路系疾患・婦人科系疾患ですが、臍下部(恥骨上部・下腹部正中)、もしくは左右どちらが痛いか、また、性別によっても原因が異なる場合があります。
昼夜・休日でも早急に受診した方がいい場合
- 痛みのために眠れない/寝ていても夜中に痛みで目覚めてしまう
- お腹の特定の場所を押すと痛みが強くなる
- 歩くなどの振動で、痛みがひどくなる
- 血便や下血がある
- 何度も吐いてしまっている
診察時間内に受診しても可能と考えられる状況
- 痛みが続いている/繰り返す
- 発熱・下痢・嘔吐がある
- 便秘と下痢を繰り返している
下腹部痛から考えられる疾患
右下腹部痛がある場合
消化器系疾患 | 虫垂炎、大腸憩室炎、大腸炎、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、胆嚢炎、膵炎、鼠経ヘルニアなど |
尿路系疾患 | 尿路結石、尿路感染症など |
婦人科系疾患 | 異所性妊娠、子宮内膜症、子宮筋腫、卵巣腫瘍、卵巣茎捻転、卵巣出血、骨盤腹膜炎、附属器(卵管・卵巣)膿瘍、附属器(卵管・卵巣)炎など |
男性疾患 | 前立腺炎、精巣上体炎など |
その他 | 動脈解離、動脈瘤破裂、腸腰筋膿瘍、後腹膜出血など |
左下腹部痛がある場合
消化器系疾患 | 便秘、腸閉塞、大腸憩室炎、大腸炎(感染性、虚血性)、炎症性腸疾患、大腸がん など |
尿路系疾患 | 尿路結石、尿路感染症など |
婦人科系疾患 | 異所性妊娠、子宮内膜症、子宮筋腫、卵巣腫瘍、卵巣茎捻転、卵巣出血、骨盤腹膜炎、附属器(卵管・卵巣)膿瘍、附属器(卵管・卵巣)炎など |
男性疾患 | 前立腺炎、精巣上体炎など |
その他# | 動脈解離、動脈瘤破裂、腸腰筋膿瘍、後腹膜出血など |
臍下部(へその周辺)、下腹部全体の痛みがある場合
消化器系疾患 | 感染性腸炎、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、大腸憩室炎、大腸炎、虫垂炎など |
尿路系疾患 | 膀胱炎、尿路結石、腎盂腎炎など |
婦人科系疾患 | 異所性妊娠、子宮内膜症、子宮筋腫、卵巣腫瘍、卵巣茎捻転、卵巣出血、骨盤腹膜炎など |
男性疾患 | 前立腺炎、精巣上体炎など |
女性の下腹部痛
女性の中には毎月訪れる生理の度に、チクチクズキズキとした子宮の痛みを感じている人もいます。
しかし、時には生理じゃないのに子宮や下腹部が痛いと感じ、不安になることもあるでしょう。
痛みは体が病気や不調を訴えているサインである可能性も。放置せず、痛みの原因を探すことが大切です。
女性の下腹部痛や子宮が痛いと感じる原因
下腹部には子宮の他にもさまざまな臓器があります。子宮が痛いと思っていても、実は全く異なる部分が痛みを発しているケースもあるでしょう。
女性の下腹部痛や子宮が痛いと感じる場合、以下のような原因が考えられます。
腸疾患
下痢などを伴っていたりギュルギュルと腸の動く音が聞こえていたりする時は、腸のトラブルが原因で痛みを感じていることもあります。腸と子宮は位置的にも近いため、子宮が痛いと思っていたけれど実は腸に原因があったというケースも珍しくありません。
尿路疾患
下腹部の鈍痛やチクチクした痛み、排尿痛などを感じる時には、尿路疾患も疑われます。特に、膣と尿道は近い位置にあるため、膣が痛いと思っていたものの、実は尿道などに何らかの疾患が見つかるケースも多いです。
婦人科疾患
女性特有の生殖器官にトラブルが起こることで、痛いと感じることもあるでしょう。婦人科疾患から起こる下腹部痛はさらに3つに分類できます。
1.がんや腫瘍
主に子宮や卵巣などに起こるがんや腫瘍は自覚症状が起こりにくいものも多く、がんや腫瘍が大きくなることで周囲の器官を圧迫し痛みを感じます。
つまり、痛いと感じた時には病状が進行しているケースが多いため、日に日に痛みが増していく場合は特に注意が必要です。
2.炎症
卵管や膣、骨盤内腹膜などが炎症を起こした際にも痛みを感じることがあります。発熱などを伴うことも多く、ズキズキとした強い痛みを感じるという人も多く見られます。
3.生理に関連する疾患
生理の際に起こる子宮収縮で痛みを感じる人も多いですが、痛みが強すぎる場合や毎回痛みが強くなっていく場合は、月経困難症や子宮内膜症などの病気が疑われます。
生理中の下腹部痛
生理前や生理中に、ぎゅっとお腹の中が絞られるような痛みを感じる場合、腸の蠕動(ぜんどう)運動によって痛みが起こっている可能性があります。
女性は生理前や生理中に、子宮から経血を排出するため子宮収縮を起こします。この時、子宮に近い腸も連動して動き、必要以上に蠕動運動が行われるため痛みを感じることがあるのです。
蠕動痛は、安静にしていることで収まるケースが多いですが、我慢できない位痛みが強い場合や、段々痛みが増していく場合は婦人科や消化器科を受診するとよいでしょう。
生理前の下腹部痛
生理前に下腹部の左右どちらかがチクチクと傷む場合は、排卵痛の可能性もあります。排卵痛は成熟した卵子が卵胞から飛び出して卵管へと移動する際に起こる痛みです。
痛みは1~3日以内には治まるケースが多く、極少量の不正出血(排卵出血)を伴うこともあります。
排卵痛は健康な人にも起こることのある痛みですが、痛みが極端に強い場合や長期間続く場合などは卵巣や卵管の病気が隠れていることもあるため、婦人科で相談してみてください。
ピルの服用による痛み
さまざまな婦人科疾患の治療や、避妊などを目的にして低用量ピルを服用している人もいるでしょう。
ピルには副作用として【下腹部痛、吐き気、不正出血、倦怠感、頭痛】などの症状がみられることもあります。
しかし、ピルの副作用は一時的なホルモンバランスの乱れによって引き起こされていることが多く、そのまま服用を続けることで症状が治まるケースがほとんどです。
稀にピルが体質に合わないこともあるので、1シート服用しても症状が治まらない、症状が段々酷くなる等の場合にはかかりつけ医に相談してみてください。
その他の場合に考えられる女性の病気
下腹部痛や生理じゃないのに子宮が痛いと感じる場合、以下のような女性特有の病気の可能性が考えられます。
月経困難症
月経困難症は生理中の症状が激しくあらわれる病気で、子宮内膜症や子宮筋腫など他の婦人科疾患が関連して発症しているケースもあります。
生理の数日前や生理中に起こるケースが多いですが、重症化すると生理じゃないタイミングでも症状が見られることがあります。
痛みの特徴
子宮が収縮する際のキリキリとした痛みを強く感じることがあります。
痛み以外の症状
頭痛やめまい、吐き気、立ちくらみ、食欲不振、下痢、イライラする、疲れやすいなどの症状がみられることもあります。
子宮頸管炎
子宮頸管炎は子宮頸管に炎症を起こす病気で、ウイルスや細菌に感染して起こる感染性子宮頸管炎とアレルギーや異物による刺激、損傷などで起こる非感染性子宮頸管炎があります。
放置すると子宮や卵管に炎症が広がり重症化してしまう恐れもあります。
痛みの特徴
性交の際に痛みを感じたり、腰痛を感じたりするケースが見られます。
痛み以外の症状
膿のようなおりものや下腹部の張り、重症化した場合高熱や激しい腹痛を感じることもあります。
子宮筋腫
子宮筋腫は子宮に良性のしこりができる病気で、30代以上の女性に多くみられます。検査などで良性であることが確認できた場合、経過観察するケースも多いでしょう。
ただし、大きさや筋腫のできた位置によっては不妊を含むさまざまな症状がみられることもあります。
痛みの特徴
下腹部が圧迫されるような鈍い痛みや、痛みが日を増す毎に徐々に強くなることもあります。
痛み以外の症状
貧血や不正出血、不妊、頻尿などの症状が見られることもあります。
子宮内膜症
子宮内膜症は子宮以外の部分に子宮内膜やそれに似た組織ができてしまう病気です。子宮内膜症になると、生理が重くなったり経血量が増加したりすることもあります。
子宮内膜が厚い状態が続くことで、周囲の器官と癒着を起こしてしまうこともあるため注意が必要です。
痛みの特徴
生理中のキリキリした強い痛みの他、生理じゃなくても生理痛に似た下腹部の痛みや排便痛、腰痛、性交痛などを感じることがあります。
痛み以外の症状
頭痛や吐き気、めまいなどを伴うこともあり、不妊の症状があらわれるのも子宮内膜症の特徴です。
子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん
子宮頚部や子宮、卵巣などにできる悪性腫瘍を、それぞれ子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんと言います。
多くの場合、初期症状などはなく症状があらわれる頃には重症化していることも珍しくありません。定期健診による早期発見が推奨されています。
痛みの特徴
子宮頸がんの場合、性交時に痛みを感じることがあります。また、子宮体がんの場合、生理痛が重くなるケースも報告されています。
基本的に初期状態では自覚できる痛みなどはあまりありませんが、がんが大きくなるにつれてジワジワと圧迫されるような痛みを感じることもあるでしょう。
痛み以外の症状
不正出血や異常なおりものなどの症状がみられることもあります。
卵管炎
卵管炎は、何らかの原因によって卵管で炎症を起こしている状態です。自覚症状があらわれにくく、症状があらわれた頃には重症化しているケースも多くみられます。
痛みの特徴
下腹部のジクジクした痛みや性交時に痛みを感じることがあります。
痛み以外の症状
おりものの増加や発熱、不正出血、吐き気、冷や汗などの症状がみられることもあります。
卵管嚢腫
卵管嚢腫は、卵管に膿の溜まった袋のような嚢腫ができてしまう病気です。初期の自覚症状などはほとんどありませんが、嚢腫が破裂してしまうと膿が広がり重症化してしまうことがあります。
痛みの特徴
嚢腫が大きくなることで周囲の器官が圧迫され、ジワジワと日毎に強くなる鈍痛を感じることがあります。
痛み以外の症状
おなかの張りや、便秘、残尿感の他、嚢腫が破裂すると激しい痛みや発熱、嘔吐などを引き起こすこともあります。
卵巣茎捻転
卵巣茎捻転は、卵巣にできた腫瘍が大きくなった時に何らかの衝撃で捩じれてしまう病気です。捻転する原因は詳しく分かっていませんが、運動や妊娠などで卵巣茎捻転を起こす人もいます。
痛みの特徴
突然、子宮の左右どちらかに刺すような激痛を感じる人が多いです。
痛み以外の症状
嘔吐や吐き気、発熱することもあります。
クラミジア感染症
クラミジア感染症は、クラミジアトラコマティスという細菌に感染して起こる感染症です。性感染症としても知られており、初期では自覚症状も少ないため知らない内にパートナーに感染させてしまうこともあります。
痛みの特徴
炎症が広がった場合には、下腹部痛を感じることがあります。また、性交時の痛みや排尿痛を感じる人も少なくありません。
痛み以外の症状
黄色っぽい膿の混ざったおりものや、不正出血が起こるケースもあります。
異所性妊娠(子宮外妊娠)
異所性妊娠とは、受精卵が子宮以外の場所に着床してしまう状態です。妊娠の継続は不可能で、卵管などに着床した場合、受精卵の成長に卵管が耐えきれず破裂してしまうことも。
ショック症状や大量出血などが起こり命の危険もあります。
痛みの特徴
突然立っているのも難しい位の激しい痛みを感じる人が多いです。
痛み以外の症状
性器出血や低血圧、顔面蒼白、悪心、嘔吐、失神などの症状が見られることもあります。
骨盤内炎症性疾患
骨盤内炎症性疾患は、子宮、卵巣、骨盤腹膜などが細菌やウイルスなどの感染によって炎症を起こす疾患です。
炎症が起きた部分によって子宮内膜症や卵巣卵管膿腫など名前が変わります。
痛みの特徴
下腹部に強い痛みを感じることがあります。
痛み以外の症状
発熱を起こすケースが多く、場合によっては吐き気や嘔吐、下痢などの消化器系症状が見られることもあります。
下腹部痛の検査
下腹部痛を原因として受診された際に考えられる検査です。
血液検査
問診や触診を行います。痛みの程度が強い場合には、炎症や感染の程度を示す白血球、CRPの検査を行うことがあります。
憩室炎や虫垂炎よる下腹部痛では数値が高めになります。当院では、院内約5分で結果がでるため迅速に診断を行うことが可能です。
大腸カメラ
大腸カメラとは、肛門から内視鏡を入れ、「直腸から盲腸までの大腸」と「小腸の一部」の状態を調べる検査です。
大腸の色や粘膜面の変化が直接観察できるため、大腸に発生したポリープや炎症、がんなどの疾患も見つけ出せます。
容態をチェックしてから、患者様に合った治療方法を選択・提案していきます。
当院では、多数の症例を経験している内視鏡専門医が検査を担当します。
治療可能な病変(ポリープなど)が見つかった際は、そのまま日帰り手術で切除することも可能です。
当院では、最新の検査機器や鎮静剤、炭酸ガスなどを使用し、苦痛の少ない検査を行っております。お気軽にご相談ください。
腹部超音波検査
「超音波」を使って、内臓や血流などを調べる検査です。
皮膚に専用のゼリーを塗ってから、プローブ(超音波探触子)を軽く当てて検査を行います。
肝臓や胆道、膵臓、腎臓といった臓器や、心臓や甲状腺、血管、乳腺などのような、検査が有効な部位でしたら、5~15分という短時間で、詳しい情報が得られます。
その安全性の高さから、妊娠中の赤ちゃんの状態を調べるためにも使われています。
検査時の痛みや不快感などはありませんので、痛みに弱い方でも安心して受けていただけます。繰り返し、ゆっくり調べられるだけでなく、リアルタイムの動きや状態を見ることも可能です。
ただし骨や空気などは超音波が通りにくいため、肺や気体のある部分、骨の奥などを調べるのには不向きだと言われています。
ここまで下腹部痛について解説してきました。
下腹部痛と言っても色々な原因や症状があるので、ご自身で見極めが難しいときは医療機関で受診してください。
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