病気解説

整形外科

肩の痛み

肩の痛み、特に肩こりは日本人が最も悩んでいる症状の一つであり、特に日本人は女性の肩こりが多い傾向にあります。
この記事では、肩こりに関係することを中心に解説していきます。

肩こりとは

実は、肩こりは、正式な病名ではありません。
首の後ろから肩、背中にかけての不快な症状の総称です。

首や肩の関節は、からだの中で最も可動域が大きく、また重たい頭部と腕を支えているため、常に緊張を強いられています。

肩こりが起こるのは、首まわりにある筋肉がこわばって硬くなり、筋肉にある血管が収縮して血行不良を招くからです。

血行が悪くなると、肩の筋肉にたまった疲労物質や痛み物質がうまく排出されず、神経を刺激して、こりや痛みが生じると考えられています。

なぜ肩こりは起こるのか

筋肉が硬くなることで筋肉の血管が圧迫されると血流不全になり、発痛物質が血管内に作られることで痛みを感じるようになります。これが肩こりです。

痛みを感じると筋肉は緊張しやすくなり、再び血流不全になり、痛みを生み出してしまうという「肩こり」の悪循環が発生してしまいます。

肩こりと筋肉

肩こりと関連する筋肉を紹介します。

僧帽筋(そうぼうきん)

首から背中にかけて広がっている筋肉で、肩こりに大きく関わっています。
僧帽筋に問題があると、肩をすくめたときに痛みが起こります。

肩甲挙筋(けんこうきょきん)

首と肩甲骨をつなぐ筋肉です。
僧帽筋とともに、肩をすくめるときに働きます。

首筋下から肩にかけてこりや痛みがある場合、肩甲挙筋が硬くなっている可能性があるでしょう。

胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)

首の側面にある大きな筋肉で、鎖骨や胸骨につながっていることから名付けられました。
首を曲げたり、回したりするときに使います。

胸鎖乳突筋が凝り固まっていると、首を前に傾ける動作がつらくなります。

頭板状筋(とうばんじょうきん)

首の後方にある筋肉で、首を伸ばすときに使います。
「首を後ろにそらすと痛い」という場合は、板状筋のこりが関与しています。

菱形筋(りょうけいきん)

僧帽筋の深部に存在する筋肉です。筋肉を縮める働きがあります。
菱形筋が緊張すると、肩甲骨の動きが妨げられ、肩こりや猫背の原因になります。

これらは場所や形が違うので、それぞれに肩こりに効果的なストレッチ方法があります。

肩こりの改善

肩こり改善のためのストレッチをいくつかご紹介します。
イスに座って簡単に効果的にできるストレッチになります。

僧帽筋のストレッチ

  1. 右手でイスを持ちます。
  2. 首を左に曲げて左手で支えます。
  3. そのまま身体を左に倒します。

肩甲挙筋のストレッチ

  1. 右手でイスの後ろの方を持ちます。
  2. 首を左前に曲げて左手で支えます。
  3. そのまま身体を左前に倒します。

四十肩と五十肩

肩こりと並んで肩の痛みで多いのが、四十肩・五十肩です。
正式には「肩関節周囲炎(かたかんせつしゅういえん)」といいます。

40代・50代で肩の痛みを訴える方が多いので、四十肩または五十肩という名称がついていますが、同じ病気です。

肩の周囲には様々な筋肉や腱、滑液包(かつえきほう)という関節の潤滑液が入った袋のようなものが存在しています。

それらの組織が日常生活の負担により炎症や損傷、組織同士の癒着が起こることにより痛みや可動域の制限が起こります。

一般的な段階としては3段階の経過をたどります。

急性期

疼痛による運動制限に加え、安静時や夜間の疼痛が出現して関節が徐々に強く固くなっていく時期になります。

  1. 鈍痛

    肩のあたりが重苦しい感じ
    肩の関節がピリッと痛む

  2. 感覚異常

    肩周りの感覚が鈍くなってくる
    腕に違和感を感じる
    首や肩のあたりに張りを感じる

  3. 疼痛

    ズキズキと、うずくような痛みがある
    肩を動かす際に痛みを感じる
    朝晩に痛みが強くなってくる

  4. 夜間時痛・安静時痛

    動いても痛いし、何もしなくても痛い
    夜寝る時に痛みがあり寝つけない、痛みで目が覚める

慢性期

安静時や運動時の疼痛が徐々に軽減するものの可動域制限が残存する時期になります。

回復期

可動域制限は少し残存するものの疼痛がほぼ消失するので、可動域も自然に回復していく時期になります。

肩関節周囲炎は個人差があるものの、最終的な予後は良好であり自然と回復に向かうことが多いと言われています。

五十肩の人の中には腱板断裂(けんばんだんれつ)といわれる肩の筋が切れてしまっている症状の方もいます。

腱板断裂とは肩の腱板と呼ばれる筋肉の集まりが断裂することを言います。

腱板は棘上筋(きょくじょうきん)・棘下筋(きょくかきん)・小円筋(しょうえんきん)・肩甲下筋(けんこうかきん)の4つの筋肉から構成されています。

腱板は上腕骨を肩甲骨に引き寄せて安定させるという重要な役割があります。

腱板断裂では肩関節周囲炎と同様に運動時の痛みや夜間痛が起こりますが、可動域制限は腱板断裂ではあまり起こりません。
ただ筋肉が断裂しているので、あまり力が入らないのが大きな特徴になります。

四十肩、五十肩と肩こりの違いは?

四十肩、五十肩と肩こりはどのように違うのでしょうか?

簡単に説明すると肩こりは「筋肉疲労」、四十肩や五十肩は「炎症」の状態です。

一般的な肩こりは筋肉の緊張からくる、血液循環の悪化が原因。習慣化した姿勢の悪さや、運動不足、ストレスにより筋肉疲労が起こり、張りや痛みを引き起こします。

一方、四十肩、五十肩は老化などにより、肩関節をとりまく関節包や腱板に炎症が起こることで痛みが生じると言われています。

そのため年齢の若い方より、中年以降に発症することが多いのです。

肩こりと四十肩、五十肩では対処の仕方が異なる場合があります。誤った判断で痛みを悪化させることのないよう、正しい診断の元、適切な対処をすることがとても大切です。

四十肩・五十肩の治療法

はっきりとした原因がわかっていない四十肩、五十肩ですが、悪化させないためにも状態に合ったケアが必要です。
四十肩、五十肩の主な治療法をいくつかご紹介いたします。

運動療法

四十肩、五十肩の治療法としては、「運動療法」をメインにしたリハビリを行います。
ストレッチや振り子運動は肩関節の緊張をほぐし、痛みの緩和と、関節の可動域を広げることを目的とします。

四十肩、五十肩はどちらか一方に発症することが多いので、痛みのない側の予防策としても日々取り入れていくことが望ましいです。

温熱療法

患部の血行を良くすることで、治癒を促し痛みの緩和が期待できます。

一般に医療機関で行う温熱療法は、ホットパックや、マイクロ波といった機器を使った治療がありますが、自宅では入浴や蒸しタオル温湿布などを使い温める方法があります。

ただ、温湿布は人によって皮膚かぶれを起こすことがあるため、長時間同じ場所に貼ることは避け、入浴後は30分以上空けてから貼り直すことで、かぶれを防ぐことができます。

また、温湿布の薬効が残った状態で入浴するとヒリヒリすることもあるので、入浴の1時間前には剥がすようにしましょう。

外出の際には肩を冷やさぬよう、ストールなどで保温することも忘れずに。

寒冷療法

四十肩、五十肩で痛みが激しく、熱を持っているような場合には、炎症を抑える「寒冷療法」を行います。

これはアイスパックなどを使うのですが、準備に時間がかかったり、凍傷を起こす可能性もあるため、自宅での対処法としてはあまり一般的ではありません。
そのような場合は、冷湿布を使いましょう。

ただ、長い時間冷やし続けてしまうと筋肉が硬くなるので、痛みが軽くなったら温湿布に切り替え血行を良くします。

肩の痛み、肩こりがつらい時は

肩関節周囲炎は無理に動かすとかえって悪化することがあります。
腱板断裂も状態によっては腱板にかかるストレスを少なくするような対応も重要です。

夜間痛などの対応や個人個人によって硬くなる筋肉も異なるので、まずは専門のリハビリスタッフに相談することが大切です。

ふじた医院では、専門のリハビリスタッフによる検査により、肩関節の症状の原因を特定してから一人ひとりにあった対応策を検討しています。痛みがある場合は遠慮なくご相談ください。

気になる痛みや症状があったらお気軽にご相談ください

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