病気解説
循環器内科
高血圧
血圧が高いと言われても、自覚症状があるわけではないし、今すぐに症状が出るわけでもないなら、放っておいても大丈夫だろうと思っていませんか?
高血圧は放置すると危険です。
この記事では高血圧の種類や関連する病気・症状などを解説していきます。
高血圧とは
高血圧とは、血圧が高い状態が続き動脈硬化などの原因となる病気です。
全身に酸素や栄養を届ける血液は、ポンプとして働く心臓によって全身に送り出されます。このとき、血液によって血管にかかる圧力が「血圧」です。
高血圧は、心臓から送り出される血液の量が多くなり、血管が細く狭くなり血液の流れが悪くなることで、血圧が基準値よりも高くなる病気です。
医療機関で計測したときに、上の血圧が140mmHg以上、下の血圧が90mmHg以上になるようであれば高血圧と診断されます(mmHgは、日本語では「ミリメートル水銀柱」〔または「水銀柱ミリメートル」〕と読みます)。
血圧が高くても、はじめはあまり症状を感じません。
人によっては、肩こりや頭痛、めまい、動悸、息切れ、むくみなどを感じることもありますが、
こうした症状は必ず現れるわけではないので、高血圧の目安とはなりません。
たとえ症状を感じなくても、血圧が基準値よりも高ければ高血圧と診断されます。
「上の血圧」「下の血圧」とは何か
「上の血圧」とは、心臓が収縮し、その力で血液が全身に送り出されるとき、動脈の血管壁の内側にかかる血液の圧力です。
収縮期血圧とも呼ばれます。この収縮期、血圧は最も高くなります。
一方、「下の血圧」とは、逆に心臓が拡張したときの、動脈の血管壁の内側にかかる圧力です。
拡張期血圧とも呼ばれます。拡張期は最も血圧が下がります。
心臓は常に収縮と拡張を繰り返しています。
収縮期には、左心房と左心室の間の弁(僧帽弁)が閉じ、大動脈と左心室の間の弁(大動脈弁)が開いて、左心室にある血液が大動脈に送り込まれます。
拡張期には、大動脈弁が閉じ、僧帽弁が開いて、肺から左心房に送られてきた酸素の豊富な新鮮な血液が、左心室に流れ込みます。
拡張期は、大動脈弁が閉ざされるため、左心室から大動脈に血液が流れませんが、だからといって、全身への血流が途絶えるわけではありません。
収縮期に大動脈に押し出された血液のうち半分強(約6割)は、大動脈が膨らんでその中に蓄積され、次の拡張期に、大動脈が元の太さに戻る圧力で、遅れて全身に送り出されるからです。
高血圧の種類
高血圧の種類をご紹介します。一口に高血圧と言ってもその原因は多岐にわたります。
本態性高血圧
血圧が高くなる他の病気やホルモンの異常などがない高血圧のことで、一次性高血圧とも呼ばれます。
日本の高血圧患者さんの約90%がこのタイプの高血圧です。本態性高血圧が起こる原因ははっきり分かっていませんが、遺伝的な要素や生活習慣が関係していると考えられています。
二次性高血圧
他の病気や、薬が原因となって起こる高血圧のことで、日本の高血圧患者さんの10%程度がこのタイプの高血圧です。
二次性高血圧を引き起こす病気としては、腎臓の病気、甲状腺ホルモンや副腎皮質ホルモンなどの異常、動脈の障害などが知られています。
原因となる病気を治療し、原因となる薬を変更することによって、多くの方で高血圧が改善します。
腎性高血圧
腎炎や腎盂腎炎といった腎臓の病気や、腎動脈が動脈硬化を起こすことによって引き起こされる高血圧のことです。
内分泌性高血圧
ホルモンの分泌がうまく行われなくなって起こる高血圧です。
原因となる病気には、腎臓の上にある副腎という臓器に腫瘍ができて起こる原発性アルドステロン症やクッシング症候群、褐色細胞腫などがあります。
血管性高血圧
心臓や大動脈の障害によって起こる高血圧です。
生まれつき大動脈の一部が狭くなっている大動脈縮窄症や、心臓と大動脈の間にある大動脈弁がうまく閉まらなくなる大動脈弁閉鎖不全症などがあります。
薬剤誘発性高血圧
他の病気の治療薬などによって起こる高血圧のことです。
非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)や喘息の治療薬、心臓の薬、うつ病の薬などの中には、血圧を高くする作用を持つものがあります。
また、血圧は時間帯や状況によって高くなったり低くなったりしていますが、病院・診療所で測った場合だけ血圧が高くなる「白衣高血圧」、逆に病院・診療所で測定した血圧は問題なくてもふだんの生活の中では血圧が高くなっている「仮面高血圧」、早朝に血圧が高くなる「早朝高血圧」、夜間の血圧が高い「夜間高血圧」などと診断されることもあります。
高血圧の初期症状
血圧が高くなると頭痛やめまい、肩こりなどの症状が出ることがあります。
ただ、これらの症状は疲労や風邪でも起こりうるため、自覚症状のみで高血圧か否か判断するのは困難です。
早期発見・早期対処するためにも、定期的に健康診断を受けるか、家庭用の血圧器を購入して、血圧を測定する習慣をつけるようにしましょう。
高血圧によって起こる病気や症状
高血圧そのものが引き起こす症状や、高い血圧が心臓に負荷をかけるために引き起こされる症状、動脈硬化と合わさって起きる症状など、高血圧は多面的に症状を引き起こします。
高血圧と最も関係が深いとされている症状
- 脳出血
- くも膜下出血
- 脳梗塞
心臓に負担が掛かり起こる症状
- 心肥大
- 狭心症
- 心筋梗塞
高血圧と動脈硬化によって起こる症状
- 腎硬化症
- 腎不全
- 大動脈瘤
- 解離性大動脈瘤
- 動脈硬化性末梢動脈閉塞症
などがあります。
血圧の急上昇を抑えるポイント
布団の中で深呼吸する
目が覚めたら、すぐに起き上がるのではなく、布団の中で深呼吸を5回~10回行なってから、身体をゆっくりと起こすことで血圧の急上昇を抑えましょう。
深呼吸は腹式呼吸でポイントは、息を吸ったときはお腹を膨らませて、息を吐いたときはお腹をへこませるように深呼吸をします。お腹に手を置いてするとやりやすいです。
布団の中で深呼吸を5~10回行なうことで、交感神経の働きを促し、急な血圧上昇を防ぐことができます。
洗顔はぬるま湯で行なう
冬の寒い時期の洗顔に冷たい水を使うと血管が収縮して血圧上昇の要因になりますので、ぬるま湯で洗顔することで血圧の上昇を抑えましょう。
洗顔時に冷たい水を使うと、血圧が20~30mmHg上昇すると言われています。
朝食はよく噛んでゆっくりと食べる
朝食を食べるときは、ゆっくりとよく噛んで食べるようにしましょう。
お味噌汁やホットコーヒーなど身体を暖めるのに飲む飲み物を急にとると血圧が上がることがあります。
食べ終わったあとも少しゆっくりしてから動くようにします。食後すぐに動くと消化を妨げてしまい、血圧上昇につながります。
トイレはいきまずゆっくりと
朝食を食べた後は、腸が活発に動きます。力を入れていきむと血圧が一気に上がりますので、急がずにゆっくりと済ませるようにしましょう。
トイレに座って、急に立ち上がると血圧が下がるため、めまいや立ちくらみが起こりやすいので、動作はゆっくりとするといいです。
血圧が高くなると、頭痛や耳鳴りなどの症状だけではなく、心筋梗塞や蛋白尿・むくみ、さらには目が見えにくいという症状まで現れる原因になります。
また、高血圧が続くと、血管に大きな負担がかかり、全身のさまざまな血管に障害が起きて、合併症を引き起こす危険性が高くなります。
引き起こされる合併症には、命にかかわるものもありますので、食事療法、運動療法、薬物療法を行い、血圧を適正な値に保ち続けることで、合併症の発病を防ぎましょう。
高血圧を改善させる対策10か条
- 塩分は控えめにしましょう
- 野菜や果物を豊富にとりましょう
- コレステロールや飽和脂肪酸を摂り過ぎないようにしましょう
- お酒を飲み過ぎないようにしましょう
- タバコはやめましょう
- 適度な運動をしましょう
- 肥満を解消しましょう
- ストレスを溜めず、充分な睡眠をとりましょう
- 急激な温度差に気をつけましょう
- 便秘にならないようにしましょう
自宅での血圧測定
血圧は血圧計さえあれば自宅で計測することが可能です。
そのうえで、注意すべき点として血圧は、運動・安静・入浴・排便・食事・睡眠・体調・精神緊張等の条件で著しく変わります。
測る前には、5~10分位安静にし条件を一定にした状態で測ることが望ましいです。
以下の点に注意して正確な測定を目指しましょう。
- いつも同じ腕・姿勢・時間で測るようにする
- 測るときは、きついシャツ等で腕の上部を締め付けないようにする
- 血圧計は、腕と同じ高さのところにおいて測る
- 血圧計は、定期的に使い始めと、その後、数年に1回の点検が必要
気になる痛みや症状があったらお気軽にご相談ください
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