病気解説
消化器内科
胃がん
胃がんの早期発見早期治療には胃がん検診が重要です。
胃がん検診についてのよくあるご質問にお答えします。
目次
- Q1胃がん検診にはどのような方法がありますか?
- Q2胃エックス線検査(バリウム検査)はどのようなものですか?
- Q3胃エックス線検査(バリウム検査)での放射線被曝が心配なのですが・・・
- Q4内視鏡検診とはどのようにして,どこでうけるのでしょうか?
- Q5胃がん検診で要精密検査と言われた場合,どこを受診したらよいでしょうか?
- Q6胃の精密検査とは、どのような検査でしょうか?
- Q7毎回精密検査が必要と言われるのですが,その度ごとに受けるのでしょうか?
- Q8胃がんと診断された場合どのような治療法があるのでしょうか?
- Q9胃がん検診で不利益なこと(副作用・偶発症など)が起こることはないですか?
- Q10胃の中に「ピロリ菌」がいるそうですが,どのようなものですか?
- Q11ピロリ菌の検査を受けたいのですが、どうすればよいのでしょうか?
- Q12ピロリ菌を除菌しても検診が必要ですか?
Q1胃がん検診にはどのような方法がありますか?
A1 胃の検査法としては、バリウム(硫酸バリウム)を飲んで胃のエックス線写真をとる「胃エックス線検査(いわゆるバリウム検査)」と「胃内視鏡検査(いわゆる胃カメラ検査)」があります。この二つの検査法は胃そのものを診る検査法です。現在のところ胃がんを直接診断する方法として科学的証拠の基に効果があるとして推奨されているのは、この「胃エックス線検査」と「胃内視鏡検査」の二つです。
Q2胃エックス線検査(バリウム検査)はどのようなものですか?
A2 胃自体はエックス線には写りません。胃の壁の状態を診るためにはエックス線に写るように工夫する必要があります。胃の壁にエックス線にうつる物質(造影剤と言います)を塗りつければエックス線に写すことが出来ます。胃エックス線検査の時にバリウムという造影剤と発泡剤(胃を膨らませる薬)を飲んで体を回転してもらいながら撮影する検査です。胃がん検診では胃がんを見つけることが目的で、通常8枚から10枚程度のエックス線写真を撮影します。検診のエックス線検査で「がん」 を疑う像があれば精密検査を受けていただきます。
Q3胃エックス線検査(バリウム検査)での放射線被曝が心配なのですが・・・
A3 胃エックス線検査での放射線被曝量は、低減の工夫も重ねられ、特に最近のデジタル装置の開発により大きく減少しています。現在の撮影装置だと検査1回当たりの被曝量は1年間に被曝する自然放射線量と大差なく、健康に影響を与える放射線被曝は殆どないと考えられています。しかし、放射線ですから、全く無害とは断定できませんので、妊娠の可能性のある女性の検査は行っておりません。
Q4内視鏡検診とはどのようにして、どこでうけるのでしょうか?
A4 内視鏡検診は通常は医療機関で行っています。胃エックス線検査(バリウム検査)だけでなく内視鏡検査(胃カメラ検査)も選択できる場合があります。内視鏡検査は管を胃の中まで挿入して先端の小型カメラ (CCD) またはレンズを通して胃を中から観察します。内視鏡を口から挿入する方法の他に最近では鼻から挿入する経鼻内視鏡が進歩し、検診には経鼻内視鏡を用いる施設も増加しています。通常、胃の検査の場合は、内視鏡での観察に5分程度かかります。その前に喉の麻酔などの前処置があります。咽喉(のど)反射等を抑えるための局所麻酔剤(咽喉への噴霧やゼリーの塗布など)と注射(鎮静剤,ちんせいざい)等を使用し胃の中を詳しく診るために胃の中に空気を送り,胃を膨らまして観察します。
Q5胃がん検診で要精密検査と言われた場合、どこを受診したらよいでしょうか?
A5 胃腸を専門とする医師のいる病院・医院の受診をお勧めします。地方自治体(都道府県,市町村)で精密検査を行う医療機関を指定している地方もあります。検診実施機関や市町村またはかかりつけ医に相談してください。
Q6胃の精密検査とは、どのような検査でしょうか?
A6 通常、検診で行う胃エックス線検査(バリウム検査)は病気の疑い所見を拾い上げることが中心で確実に胃の病気を診断することが目的ではありません。最近は精密検査では、内視鏡検査をすぐ行うことが多くなっています。また、胃の壁から少量の胃の組織を採取(生検・バイオプシーといいます)して、病理学的検査を行う場合があります。
Q7毎回精密検査が必要と言われるのですが、その度ごとに受けるのでしょうか?
A7 どんな小さながんでも必ず一回で発見できるという検査法はありません。検査で発見できるためにはある程度以上の大きさや明確な所見が必要です。また、がんと区別することが難しい胃潰瘍(いかいよう)や胃のポリープ、変形などがある場合には、毎回精密検査が必要と判定されることがあります。毎年の精密検査でその都度「がんはない」とされてもその次の年も同じという保証はありません。精密検査が必要と言われたら必ず精密検査をお受けください。
Q8胃がんと診断された場合どのような治療法があるのでしょうか?
A8 現在では、早期がんの大半は内視鏡で切り取るだけの治療で済むようになりました。内視鏡的粘膜剥離術(ESD)と言います。この治療法に要する時間は数時間位です。入院は施設によって異なりますが1週間までの病院が多いようです。ESDでの切除が困難な場合でも比較的早期であれば開腹手術ではなく腹腔鏡(ふっくうきょう)による手術が行われます。腹部に数箇所小さな穴を開けて腹腔鏡で観察しながら他の穴から操作してがんのある部分を含めて胃を切除します。腹腔鏡手術では困難な場合は開腹手術となります。進行がんの場合は切除した後でも抗がん剤治療を行うことがあります。なお,上記は一般的な情報で詳細は病状で大きく違いますので医療機関にご相談ください。
Q9胃がん検診で不利益なこと(副作用・偶発症など)が起こることはないですか?
A9 検診では,比較的安全な検査法を用いることを原則として採用していますが、生体に何らかの刺激を与えるのですから完全に無害なものはありません。胃エックス線検査でバリウムが誤って気管にはいること(誤嚥)が起こることがあります。また、バリウムがなかなか排泄されずに便秘になったり、ごく稀にはバリウムが詰まって腸に穴があき緊急手術が必要となることもあります。放射線被曝の影響を考慮して妊娠可能性のある女性は受診していただきません。内視鏡検診では、前処置として行う注射や麻酔剤によりショック等の危険が稀にあります。また、胃に空気を入れて内視鏡を操作し生検も行ったりすることから胃の粘膜に穴が開く(「穿孔(せんこう)」といいます)ことも極めて稀ですがあり得ます。専門の医療機関ではそれらに対処するための予防策や起こった時の対応策をしっかり準備しています。検査を受ける前には検査の準備や内容等を詳しく担当医から説明して貰ってください。
Q10胃の中に「ピロリ菌」がいるそうですが、どのようなものですか?
A10 胃の中は酸性が強い場所ですから細菌は住むことはできないと長い間考えられてきました。しかしながら、ピロリ菌(正式名称:ヘリコバクターピロリ)は食物に含まれる尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解する力が非常に強く、アルカリ性であるアンモニアで自分自身を守りながら胃の中で棲むことができると考えられています。ピロリ菌感染が慢性に持続すると胃粘膜には炎症が起きます。そして、個人によりスピードに差はありますが、胃がんを発症する場合があります。
Q11ピロリ菌の検査を受けたいのですが、どうすればよいのでしょうか?
A11 がん検診では胃カメラで胃の精密検査を行った後でピロリ菌の感染検査を保険診療で受けていただく、という順番で検査をすすめています。ピロリ菌の検査と除菌治療は、胃潰瘍・十二指腸潰瘍、早期胃がん内視鏡治療後、胃マルトリンパ腫、免疫性血小板減少症、ピロリ感染胃炎に対して保険診療が可能です。胃炎では、内視鏡検査(胃カメラ)で胃炎があった場合に、保険診療でピロリ菌の検査が行えます。内視鏡検査時に組織を採取しピロリ菌の検査を行い、そのあと血液や便の検査などでも検査を行うことができます。
Q12ピロリ菌を除菌しても検診が必要ですか?
A12 ピロリ菌を除菌治療しますと胃がん発生リスクが除菌前より低下すると期待されています。しかしながら、ピロリ菌に全く感染したことのない人と同じレベルになるわけではありません。除菌治療に成功した後も定期的に内視鏡検査(胃カメラ検査)あるいは胃エックス線検査(バリウム検査)が必要です。引き続き胃がん検診を受けてください。
気になる痛みや症状があったらお気軽にご相談ください
WEBでお問い合わせ