病気解説

内科

帯状疱疹

急に肌がピリピリと痛がゆくなってくる、帯状疱疹という病名を聞いたことがありますか?
帯状疱疹は、体のかゆみや痛みをともなう病気で、日本人の6人に1人の割合でかかると言われている病気です。

ご自身での見極めは難しいことが多いので、不安な場合は、ご相談ください。アクセスはこちら。

帯状疱疹とは

帯状疱疹の特徴

帯状疱疹は、水ぼうそうと同じウイルスで起こる皮膚の病気です。
体の左右どちらかの神経に沿って、痛みを伴う赤い斑点と水ぶくれが多数集まって帯状に生じます。

症状の多くは上半身に現れ、顔面、特に目の周りにも現れることがあります。
通常、皮膚症状に先行して痛みが生じます。その後皮膚症状が現れると、ピリピリと刺すような痛みとなり、夜も眠れないほど激しい場合があります。

多くの場合、皮膚症状が治ると痛みも消えますが、神経の損傷によってその後も痛みが続くことがあり、これは「帯状疱疹後神経痛(PHN)ピーエイチエヌ」と呼ばれ、最も頻度の高い合併症です。

また、帯状疱疹が現れる部位によって、角膜炎、顔面神経麻痺、難聴などの合併症を引き起こすことがあります。

疲労やストレスなども発症のきっかけになります。
また、糖尿病やがんなどの免疫力が低下する病気が原因になることもあります。

帯状疱疹発症のメカニズム

日本人成人の90%以上は、帯状疱疹の原因となるウイルスが体内に潜伏している

帯状疱疹は、多くの人が子どものときに感染する水ぼうそうのウイルスが原因で起こります。

水ぼうそうが治った後も、ウイルスは体内(神経節)に潜伏していて、過労やストレスなどで免疫力が低下すると、ウイルスが再び活性化して、帯状疱疹を発症します。

発症すると、皮膚の症状だけでなく、神経にも炎症を起こし、痛みが現れます。

神経の損傷がひどいと、皮膚の症状が治った後も、痛みが続くことがあります。

日本人成人の90%以上は、このウイルスが体内に潜伏していて、帯状疱疹を発症する可能性があります。

主な合併症:帯状疱疹後神経痛(PHN)

50歳以上で帯状疱疹を発症した人のうち、約2割は3か月以上痛みが続く

神経が損傷されることで、皮膚の症状が治った後も痛みが残ることがあり、3か月以上痛みが続くものを帯状疱疹後神経痛(PHN)ピーエイチエヌと呼びます。

PHNは、「焼けるような」「締め付けるような」持続性の痛みや、「ズキンズキンとする」痛みが特徴です。

PHNになりやすい因子として、年齢(高齢者に多い)、痛みが強い、皮膚症状が重症である、などがあります。
50歳以上で帯状疱疹を発症した人のうち、約2割がPHNになるといわれています。

その他の合併症

目や耳に症状がでたり、顔面神経麻痺などの重い後遺症が残ることも

帯状疱疹は頭部から顔面に症状が現れることもあり、目の症状として角膜炎や結膜炎、ぶどう膜炎などの合併症を引き起こすことがあります。重症化すると視力低下や失明に至ることもあります。

その他の合併症として、顔面神経麻痺や耳の帯状疱疹を特徴とする「ラムゼイ・ハント症候群」と呼ばれるものがあります。耳の神経への影響から、耳鳴り、難聴、めまいなどを生じます。

このように、帯状疱疹はさまざまな合併症を引き起こすことが知られていますが、できるだけ早く治療を行うことによって予後を改善できる合併症もありますので、早めの受診が大切です。

帯状疱疹にならないために

帯状疱疹にならないために必要なことは、日頃から体調管理を心がけること!免疫力が低下しないようにすることが大切

帯状疱疹は、加齢や疲労などによる免疫力の低下に伴い、誰でも発症する可能性のある病気です。帯状疱疹になりにくい体づくりのためには、食事のバランスに気をつける、睡眠をきちんととるなど、日頃から体調管理を心がけることが大切です。

50歳以上の方は、ワクチン接種で予防することができます。帯状疱疹ワクチンには、不活化ワクチンと生ワクチンがあります。

生ワクチンは、病原体となるウイルスや細菌の毒性を弱めて製造されています。

不活化ワクチンは、病原体となるウイルスや細菌の感染力を失活、もしくは病原体を構成する物質をもとにして製造されています。

帯状疱疹になりやすい人

帯状疱疹の発症には年齢が大きくかかわり、高齢になると発症しやすくなります。加齢による免疫力の低下が原因と考えられています。

兵庫県で1987年から2016年に行われた疫学調査では、50~70代で患者数が多くなっています 3)

宮崎県で2009年から2015年に行われた疫学調査 4)でも、帯状疱疹の発症率は50歳以上で増加しています。この調査では50歳代と60歳代では女性の方が男性より多いという結果でした。

  • 3)倉本賢: 日臨皮会誌. 34(6), 688-694, 2017
  • 4)Shiraki K. et al.: Open Forum Infect Dis. 4(1), ofx007, 2017

免疫力が低下した人

帯状疱疹は、加齢や疲労、ストレスなどによって免疫力が低下すると発症します。

また、骨髄移植や臓器移植後の患者さん、白血病や悪性リンパ腫のような血液がんの患者さん、あるいは、全身性エリテマトーデス(SLE)の患者さんなどで、帯状疱疹になってしまう割合が高くなっています。

水ぼうそうになったことがない人は?なった人は帯状疱疹を発症する可能性がある

水ぼうそうになったことのない人は、帯状疱疹になることはありません。

水ぼうそうになったことのある人は、治った後も水痘・帯状疱疹ウイルスが体内に症状を出さない状態で潜み、ウイルスが再び目覚めることで帯状疱疹として発症します。

日本人では15歳以上の概ね9割以上は、水痘・帯状疱疹ウイルスに対する抗体を持っています 5)。抗体があるということは、そのウイルスが体内にはいったことがあると考えられます。そのため、多くの人が帯状疱疹を発症する可能性があります。

  • 5)多屋馨子 他: 病原微生物検出情報(IASR). 39(8), 133-135, 2018(水痘抗体保有状況:2014~2017年度感染症流行予測調査事業より)

帯状疱疹に繰り返しなるのか?

帯状疱疹は、一度発症したら二度とならないわけではなく、約6%の割合で繰り返し発症することがあります 4)

  • 4)Shiraki K. et al.: Open Forum Infect Dis. 4(1), ofx007, 2017

帯状疱疹が再発する原因

帯状疱疹になると、その原因となる「水痘・帯状疱疹ウイルス」への免疫ができます。

しかしその後、加齢や疲労、ストレスなどによって免疫力が低下すると再発することがあります。1年以内に再発するケースはきわめてまれです 6)

膠原病、特にSLEを有する場合に再発しやすいという報告もあります 7)

  • 6)外山望: 病原微生物検出情報(IASR). 39(8), 139-141, 2018
  • 7)田中信他: 臨床皮膚科. 47(1), 31-33, 1993

再発した場合の場所

帯状疱疹が再発した場合、前回と同じ部位への発症はあまり多くありません。同一神経領域に再発するのは3割程度で、反対側の神経領域には2割ほど、その他の神経領域は約5割です 7)

  • 7)田中信他: 臨床皮膚科. 47(1), 31-33, 1993

再発した場合の治療方法について

帯状疱疹の治療方法は、その原因となるウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬の投与と、痛みに対する痛み止めの投与が中心となります。帯状疱疹が再発した場合も同様の治療を行います。

帯状疱疹発症後、免疫はつくのか?

帯状疱疹を一度発症すると、免疫はつくとされていますが、再び免疫力が低下した場合には再発することがあります。

帯状疱疹は人にうつるのか?

帯状疱疹を発症した人の水ぶくれの中には、その原因となるウイルスが存在しています。

水ぼうそうになったことのない人に帯状疱疹としてうつることはありませんが、主に接触することによって、水ぼうそうとしてうつる可能性があります。

一方で、すでに水ぼうそうになったことのある人に帯状疱疹としてうつることはありません。

帯状疱疹が人にうつる原因

帯状疱疹を発症した人の水ぶくれの中には、「水痘・帯状疱疹ウイルス」が存在しているため、水ぼうそうになったことのない人に対しては、主に接触することによって、水ぼうそうとしてうつることがあります(うつされた人は帯状疱疹になりません)。

そのため、水ぶくれが、かさぶたとなって完全に乾燥するまでは、うつしてしまうおそれがありますので、水ぼうそうになったことのない子どもなどとの接触は避けましょう。

帯状疱疹が人にうつるとどうなるか?

帯状疱疹は、水ぼうそうになったことのない人に対して、主に接触感染によってうつり、この場合、帯状疱疹ではなく、かゆみを伴う発疹(水ぶくれ)と発熱を主な症状とする水ぼうそうとして発症します。

免疫力が大きく低下した人を除き、すでに水ぼうそうになったことのある人にうつることはありません。

帯状疱疹は子どもにうつるのか?

帯状疱疹は、水ぼうそうになったことのない子どもや赤ちゃんにうつる可能性があり、うつしてしまうと水ぼうそうを発症します。

乳児や、水ぼうそうのウイルスに免疫を持たない母親から生まれた赤ちゃん、さらに妊婦は水ぼうそうが重症化するリスクが高く、妊娠中に発症した場合には、先天性水痘症候群の赤ちゃんが出生することがありますから、帯状疱疹を発症した方は特に赤ちゃんや妊婦との接触は避けるべきだとされています。

帯状疱疹の発症する部位

帯状疱疹の症状は通常、体の左右どちらかの神経に沿って帯状に現れます。多くは上半身にみられ、上肢~胸背部が約30%、腹背部が約20%です。顔面、特に目の周りに現れることもあります。

顔に発症した場合

帯状疱疹がほっぺたやおでこなど、顔に現れた場合、他の部位と同様に、通常は皮膚症状に先行して痛みやかゆみが生じます。

症状は頭皮や耳などにも発生する場合があります。

また、目の周りに現れたものは「眼部帯状疱疹」と呼ばれ、特に注意が必要です。発症初期から結膜炎や角膜炎などが起こることもあります。

首に発症した場合

帯状疱疹は、頭部(首)に症状が出ることもあります。肩から首筋の激しい痛み、あるいは腕が上げられないといった運動麻痺の症状が出ることがあります。

腕に発症した場合

帯状疱疹の症状は上肢(腕)に出ることもあります。

帯状疱疹は片側の神経の流れに沿って現れることから、上肢に発症する場合も通常、左右どちらかの肩や腕、手に生じる痛みやかゆみに続いて、発疹と水ぶくれが帯状にみられます。

背中に発症した場合

帯状疱疹は、背中に症状が現れることもあります。背中に発症した場合は、自分では皮膚の変化が見難いので注意が必要です。

汎発性帯状疱疹

帯状疱疹は、通常は体の左右どちらかに起こりますが、ごくまれに両側に発症する場合があります。

たとえば、帯状の皮膚病変のほかに、少し離れて水ぶくれなどの発疹がみられることがあります。これを汎発性帯状疱疹といいます。

帯状疱疹の治療法は症状によってさまざま

帯状疱疹の治療は、原因となっているウイルスを抑える抗ウイルス薬と、痛みに対する痛み止めが中心となります。

帯状疱疹の痛みは発疹とともに現れる痛みと、その後、神経が損傷されることにより長く続く痛みに分けられ、それぞれに合った痛み止めが使われます。

抗ウイルス薬による治療

帯状疱疹の治療には抗ウイルス薬が使われます。抗ウイルス薬は、水痘・帯状疱疹ウイルスが活性化して活発に増えている段階でウイルスのDNA(遺伝情報をもっているもの)の合成を妨げることで、ウイルスが増えるのを抑える働きをします。

症状が軽い場合や中程度の場合には、内服薬(飲み薬)の抗ウイルス薬で治療することができます。

症状が重い場合や免疫力が低下している場合には、入院した上で抗ウイルス薬の点滴による治療が必要となることがあります。

痛み止め(鎮痛剤)で痛みを止める治療

帯状疱疹による痛みに対しては、痛み止めでの治療が行われます。帯状疱疹の痛みは発疹が出るよりも先に現れることが多く、このような皮膚の痛みに対しては、鎮痛剤が用いられることもあります。

痛み止めによる治療はあくまでも痛みに対する治療であり、帯状疱疹そのものを抑えるためには抗ウイルス薬による治療が必要となります。

夜も眠れないほどの強い痛みが続く場合には、ペインクリニックなどで神経ブロックと呼ばれる治療が行われることもあります。神経ブロックは神経の近くに局所麻酔薬を注入して、神経の伝達をブロックする方法です。

塗り薬(外用薬)を使った治療

帯状疱疹に対して塗り薬が使われることがあります。

抗ウイルス薬の塗り薬(軟膏など)には、皮膚の表面でウイルスが増えるのを抑える効果が期待できます。抗ウイルス薬の塗り薬は、ごく軽症の場合や、すでにウイルスの活性化が抑えられている場合に使われます 8)

また、痛み止めとして患部の炎症や痛みを抑えるための鎮痛剤・局所麻酔薬、皮疹によってできた皮膚の傷に対するお薬、抗菌薬などの塗り薬が使われることがあります。

  • 8)白濱茂穂、渡辺大輔 編: 目からウロコのヘルペス診療ハンドブック
    その診断・治療で大丈夫?. p155, 南江堂. 2017

帯状疱疹後神経痛の治療

帯状疱疹後神経痛(PHN)ピーエイチエヌは、皮膚の発疹がなくなった後も残る神経性の痛みです。帯状疱疹の発疹とともに現れる皮膚の炎症による痛みとは痛みのメカニズムが異なり、神経に関係する痛みとしての治療が行われます。

皮膚の発疹がなくなった後に強い痛みが残る場合、痛みが長く続いた場合にはPHNが疑われます。

PHNの痛みは「刺すような痛み」や「焼けるような痛み」と表現されます。PHNは3か月以上痛みが残る場合に診断されることが多いのですが、皮膚の発疹がなくなった後も痛みが続く場合、PHNと考えて治療が行われることもあります 9)

PHNに対してはCa2+チャネルα2δリガンド鎮痛補助薬のうち保険適用のある薬剤が用いられることがあります。

鎮痛補助薬が有効でない場合は、オピオイド鎮痛薬という麻薬性のお薬が使われることもあります。うつ病治療薬も、保険適用のある薬剤が用いられることがあります。

PHNに対してはお薬による治療がメインとなりますが、それに加えて神経ブロック注射やレーザー治療が行われることもあります。

  • 9)白濱茂穂、渡辺大輔 編: 目からウロコのヘルペス診療ハンドブック
    その診断・治療で大丈夫?. p148-151, 南江堂. 2017

帯状疱疹予防の方法はあるのでしょうか?

はい。50歳を過ぎたら、帯状疱疹の予防接種を受けることができます

帯状疱疹はだれもが発症するおそれのある病気だからこそ、予防に目を向けることが大切です。

つらい痛みが長く続くと普段の生活がしづらくなり、仕事や趣味を楽しむことにも影響がでてきます。帯状疱疹からPHN(ピーエイチエヌ)になってしまうと、それが長期間続くこともあります。

長い人生を考えれば、帯状疱疹の予防に取り組むことはとても意義のあることです。

帯状疱疹を予防するには、日頃から健康的な生活を心がけ、免疫力が低下しないようにすることが基本です。50歳以上の方は帯状疱疹の予防接種ができるので、まずは医師に相談してみましょう。

ワクチンを接種すると、どんな効果が期待できますか?

ウイルスに対する免疫力が強化されます

子どもの頃に水ぼうそうになったことのある人では、すでにウイルスに対する免疫ができていますが、免疫力は加齢とともに弱まってしまいます。

ワクチンを接種すると、ウイルスに対する免疫力が強化されます。ワクチン接種は帯状疱疹を完全に防ぐものではありませんが、発症を抑える効果が期待されます。また、現在国内では2種類のワクチンが使用できます。

帯状疱疹の予防接種は、どこで受けられますか?

内科や皮膚科などで受けることができます

帯状疱疹や予防接種については、かかりつけの医師や医療機関にご相談ください。ふじた医院で受診される場合はこちら。

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