病気解説
整形外科
腰痛
腰痛はとても身近な痛みの症状のひとつです。
日常の疲労での腰痛など痛みを感じている人は多いのではないでしょうか。
腰痛は重症化すると、仕事や普段の生活に支障をきたすほど深刻な影響を及ぼす場合がありますので注意が必要です。
腰痛の原因には、背中が抱える問題以外にもさまざまな種類があり、対処法によって良くもなれば悪くもなります。腰痛の原因や種類ごとの対処法について知っておけば、重症化予防につながります。
腰痛の主な原因
腰痛には様々な原因があります。
腰椎(ようつい)に原因がある
腰痛のほとんどは、腰椎(背骨の腰の部分)に原因があります。
ぎっくり腰、腰椎椎間板症や腰部椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症などの「変形性腰椎症」と呼ばれるもの、代謝異常からくる破壊性脊椎関節症や骨粗しょう症が原因のタイプ、感染性脊椎炎、関節リウマチ性脊椎炎、強直性脊椎炎などの炎症からくる腰痛、腫瘍性疾患など、原因は多岐にわたります。
腰痛の症状を悪化させないためにも、自己判断ではなく、医療機関を受診し、しっかりと原因を特定した上で治療を受けることが望ましいといえるでしょう。
内臓の病気が原因の場合
もし、背中から腰にかけて、痛い、重い、だるいなどの症状があったとしたら、胃腸・膵臓・肝臓・胆のうなどの内蔵の病気が原因の腰痛かもしれません。
身体の後ろ側の後腹膜(こうふくまく)と呼ばれる場所にある臓器に異常があると、腰に痛みが出やすくなります。
他にも、腎臓・尿管結石・膀胱の病気や子宮などの婦人科系の病気が腰痛の原因となる場合もあります。
高熱と一緒に、膀胱炎のような症状が現れる、腎盂腎炎の場合にも、腰痛が見られます。
また、腹部大動脈瘤などの血管の病気の場合も、腰痛が出ることがあります。
内臓の病気の症状は、主な腰痛の原因である姿勢とは関係なく起こることも特徴です。
その他の原因
ストレスが大きな原因となる、心因性腰痛と呼ばれる腰痛も存在します。
腰痛だけでこれらの疾患を疑うことは難しいですが、このような他の症状もみられた場合は早めに病院にかかりましょう。
特に循環器系は命に関わるので、迅速な判断が肝心です。
また、癌の既往歴がある場合は特に注意を要するでしょう。
要注意の症状
このように腰痛の影には大きな疾患が潜んでいる可能性があります。
とはいえ、もちろん全ての腰痛がこのような危険のサインであるという訳ではありません。
体を動かしたときにだけ腰が痛む場合
基本的に、身体を動かした時だけ痛む場合は、腰の椎間関節や筋肉が原因の腰痛である可能性が高いとされています。
そのため、一ヶ月ほど様子を見ると治ることが多いでしょう。
ただし、悪化したり長引く場合は整形外科を受診しましょう。
常に腰が痛い、または痛みが増していく場合
一方で、じっとしていても姿勢を変えても痛む場合や数ヶ月スパンで徐々に痛みが増していく場合は、脊椎の問題や上で述べたような内臓疾患が原因の場合があるので、注意が必要です。
発熱、体重の減少がみられる場合
微熱や上で述べたような他の症状がある、体重の減少がみられるといった場合も、早めに病院を受診しましょう。
特に、50歳以上で慢性的な腰痛を抱えている、癌の既往歴がある方で気になる症状がある場合、外科やかかりつけ医に相談するようにしてください。
症例紹介
以上のように、腰痛の原因として様々な内臓疾患の可能性があります。
ただし、それぞれの病気で腰痛の感じが異なったり、違う症状を伴います。
いくつか具体的な例を紹介していきます。
胃潰瘍等消化器系の病気
消化器系の病気と腰痛はなかなか結びつかないかもしれませんが、腰痛も症状の一つとして現れる場合があります。
胃潰瘍や十二指腸潰瘍はその代表的な例です。
この病気は胃液によって胃や十二指腸の粘膜が傷つけられることによって引き起こされます。
胃潰瘍でも潰瘍が背中側にできた場合、背中側が痛むため腰痛と勘違いされるケースがあります。
その他の特徴としては、みぞおちから左にかけて痛むことが多いことが一つ挙げられます。
また、十二指腸潰瘍も腰痛と混同される場合があります。
痛みがない場合もありますが、胃潰瘍とは逆にみぞおちから右にかけて痛むことがあります。
また、空腹時や夜間に痛みを感じることも特徴の一つです。
尿路結石等泌尿器系の病気
泌尿器系の疾患の場合、排尿障害や血尿がみられる場合が多いです。
その中の一つ、尿路結石は男性に多い疾患で、尿路にカルシウムなどのミネラルでできた石ができることによって起こる病気です。
そのため激しい痛みが急に出たり消えたりを繰り返します。
また、泌尿器系の病気では、腎盂炎なども考えられます。
腎盂炎は大腸菌などの細菌が腎臓の一部に侵入することによって起こる病気で、腰よりもやや上に痛みがみられる場合もあり、発熱がみられるという特徴があります。
子宮内膜症等婦人科系の病気
腰痛の原因には女性特有の婦人科系の病気が関係している場合もあります。
子宮内膜症は若い女性を中心に増えている病気で、本来子宮の内側を覆っている子宮内膜やそれに似た組織が卵巣などの他の臓器にできてしまうことによって起こります。
そのため、この病気の大きな特徴は月経痛などの月経トラブルが強くなることです。
そして、腰痛もこの病気の症状の一つとしてあげられ、この病気の方の半数以上が腰痛を訴えているという報告もあります。
痛みが腰だけでなく、背中や股関節、脚にまで広がることもあることが特徴と言えるでしょう。
そのほかに腰痛を引き起こす婦人科系の病気の代表的な例として、子宮筋腫も挙げられます。
子宮筋腫は子宮の筋肉にできる良性の腫瘍です。
悪性腫瘍に変わったり、転移することはほとんどありませんが、サイズやできた場所によって様々な症状を引き起こすことがあります。
代表的な症状としては、過多月経や月経痛などの月経トラブルで、子宮内膜症と共通するものもありますが、筋腫が大きくなると下腹部を触ったときに硬いものに気が付く場合があることが特徴です。
そして、筋腫が神経を圧迫すると腰痛も症状として現れることがあるのです。
腫瘍性疾患
以上のような内臓疾患以外にも脊椎や脊髄の疾患や癌などの可能性もあります。
これらの病気は進行しないように早めに発見することが肝心です。
脊椎や脊髄の腫瘍
脊椎や脊髄に腫瘍ができた場合も腰痛を引き起こすことがあります。
脊髄と脊椎神経、およびその周辺組織にできる腫瘍を脊髄腫瘍と総称します。
脊髄腫瘍には、他の腫瘍と同様に、その箇所で最初に発生する原発性腫瘍と他の箇所から転移してきた転移性腫瘍があります。
転移性についてはまた次の項で解説します。
原発性腫瘍の場合、基本的に手術治療が行われ、発生頻度はそれほど高くないと言われています。
症状としては、脊髄や神経が圧迫されることによって手足の痺れや感覚障害が起こります。
ただし、どの高さに腫瘍ができるかによって症状が出る部位が変わり、腰の部分にできた場合などは手には症状が出ない場合があります。
さらに進行していくと排泄障害を引き起こすことがあります。
症状の一つである腰痛の特徴としては、痛みが進行すること、安静にしていてもよくならないこと、夜間に痛むことなどが挙げられます。
骨にがんが転移したことによる腰痛の場合も
上で述べたように、脊髄腫瘍にも原発性と転移性があります。
転移性は他の箇所で最初に発生した悪性腫瘍が転移したもので、癌で亡くなる症例の30%に骨への転移があると言われています。
その中でも、腰椎への転移が多いため、腰痛が症状として出ることが多いのです。
転移性の場合は放射線などの化学治療が選択されることが多いですが、手術が適用されることもあります。
骨に転移しやすい癌は、肺癌、乳癌、前立腺癌と言われています。
そのため、こういった癌の既往症があり、痛みがひどくなったり、じっとしていてもよくならないような腰痛が起こった場合は、早めに主治医に相談するようにしましょう。
腰に負荷がかかるタイミング
日常の生活の中で腰に負担がかかることはいっぱいです。
- 長時間同じ姿勢でデスクワーク、長距離運転をしている時
- 農作業や介護で、前かがみで仕事をしている時
- 事故などで腰に大きな衝撃を受けた時
- 重労働や引越し作業で中腰の状態で重いものを持ったり、運んだりしている時
- 激しいスポーツをしている時。またはスポーツのやりすぎ
- 日ごろの運動不足解消にと、無理に体を動かした時
- 妊娠中(体を反って歩く)や育児(子どもを抱く)の時
治療方法
病院の治療にはいくつかの方法があります。
症状に応じて治療法を選択します。
飲み薬や湿布で痛みを止めます。痛みが強いときは消炎鎮痛剤の注射を打つ場合もあります。また経過を見ながら、リハビリ(電気治療や腰を引っ張る)や筋肉の運動(筋肉をほぐす運動、筋肉をつける腹筋や背筋)を行います。
そのほか、コルセットやブロック注射(神経根ブロック、椎間板ブロック)、手術など、症状に応じたさまざまな治療法があります。
腰痛を防ぐには
日常生活での過ごし方や軽い運動で腰痛を予防していくことも肝心です。
ストレッチ
腰痛症の予防には、腰回りの筋肉を柔らかくしておくことが大切です。
腰痛体操にはいろいろな種類があるため、自分が気持ちがいいと感じる体操を無理なく取り入れてみましょう。
※注意
腰痛体操は、激しい痛みのある方は行わないでください。
すべての体操を行う必要はありません。5回を目安に、無理のない範囲で行いましょう。
普段から予防を心がけることが大切です。
お腹のストレッチ
うつ伏せになり、手のひらを床に向けて、両腕を頭のほうに伸ばす。
腕が90度くらいになるまで両肘を曲げながら、ゆっくりと上半身を起こす。
背中・腰のストレッチ
あおむけになり、両膝を曲げて両手で抱える。
両膝を胸に引き寄せながら、背中を丸めるようにして上半身をゆっくりと起こす。
腰~お尻のストレッチ
あおむけになり、両膝をたてる。
頭や背中は床につけたまま、両膝を両手で抱え込む。
スイミング
プールで水中ウォーキングをするだけでも筋力がつきます。
イス・ベッドなどを選ぶ
やわらかいベッド・ソファーは腰に負担がかかります。
イスは低いものより、高いものを選びましょう。
温める
腰を温めることが大切です。
毎日の入浴は腰痛の予防に効果があります。
ダイエット
太っていると、腰に体重がかかります。ダイエットしましょう。
靴を選ぶ
自分の足に合わない靴ははかないようにしましょう。
高すぎるヒールも腰に負担がかかります。
まとめ
様々な解説をしてきましたが、腰痛はとても身近な痛みの症状のひとつで、数多くの原因や病気につながる基礎症状のひとつでもあります。
ご自身で判断できない時は、躊躇せずに病院で受診しましょう。
ふじた医院では、医師をはじめ、専門のリハビリスタッフが常駐しておりますので、お気軽にご相談ください。アクセスはこちら。
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