病気解説

整形外科

巻き爪

爪が皮膚に刺さって痛い、爪が曲がって伸びてきたなどの悩みを抱えている人はいませんか?

爪の病気にもいろいろありますが、その中でもなりやすい病気として巻き爪と陥入爪があります。

この記事ではそんな爪の病気について解説をしていきます。

足の爪に症状がある場合には歩行するだけで痛みを伴うことが考えられるので、痛みがある方は速やかに病院での治療をご検討ください。ふじた医院へのアクセスはこちら。

あなたは本当に巻き爪?

足の爪の変化や痛みに気づいたときに大切なのは、その症状は一体どのような病気に該当するのかということです。

ここでは、足の爪の変化や痛みを伴う病気の代表例である、「巻き爪」と「陥入爪」という2つの見分けにくい病気について、爪の変形や痛みの状態から解説します。

その上で、まずは最も代表的な爪のトラブルである「巻き爪」が起こる原因について考えていきましょう。

「足の爪のあたりが痛い=巻き爪」ではない

足の爪に痛みが出たときに、まずは巻き爪を疑ってしまいますが、巻き爪とは、爪の端が内側に巻き込んだ変形のことをさします。

巻き爪の縁は爪の下や周りの皮膚を傷つけやすいため、細菌感染も重なって炎症を起こした状態である「爪囲炎(そういえん)」を起こすことが多いのです。

これとよく似た病気に、爪の先端が周囲の皮膚に刺さって炎症を起こした状態である「陥入爪(かんにゅうそう)」があります。

陥入爪は、巻き爪があると起こりやすいのですが、巻き爪がなくても起こります。つまり、爪のあたりが痛いからと言って必ずしも巻き爪というわけではないのです。

「巻き爪」と「陥入爪」を見分けよう

足の爪に変形や痛みを起こしている場合、次のようなパターンが考えられます。正確な診断と治療方針の相談のためには、病院で受診することをおすすめします。

  1. 爪が巻いていて痛みがあるが、皮膚に刺さってはいない
    巻き爪の可能性が高い状態です。爪の端が内側に巻き込んで、爪の下の皮膚を挟んだり刺激したりして痛みが生じているようです。医療機関による診断を受け、必要に応じて矯正治療を検討しましょう。
  2. 爪が巻いているが、痛みはない
    巻き爪の可能性が考えられます。爪が変形しているものの、皮膚への刺激は軽いため痛みまでは生じていないようです。変形が強く、靴を履いたときに当たる場合や見た目が気になる場合には、矯正治療を検討しましょう。
  3. 爪が巻いており、皮膚に刺さっていて腫れと痛みがある。
    巻き爪と陥入爪の両方が生じていると考えられます。巻き爪の変形に加え、爪が皮膚に食い込んだ状態であるため、痛みが強く、炎症による腫れ・赤みや出血を伴うことが多いでしょう。医療機関を受診して治療することをおすすめします。
  4. 爪は巻いていないが、皮膚に刺さっていて腫れと痛みがある。
    陥入爪の状態と考えられます。間違った爪の切り方によって、短すぎる爪やとがった形の爪が皮膚に刺さっている可能性があります。このような場合には、爪が皮膚に食い込むのを防ぐ処置をする、刺さった部分の爪を取り除くなど、医療機関で陥入爪に対する治療を行うことをおすすめします。

巻き爪の原因

巻き爪の原因は、

  1. 体質的な素因(=なりやすい人)
  2. 正しく歩かないこと
  3. 靴などによる外的な刺激

が主な3つの要因として挙げられます。

  1. なりやすい人・体質

    巻き爪の原因として「なりやすい人・体質」があることを支える状況証拠はいくつか挙げることができます。

    「巻き爪にはなりやすい人・あまり巻き爪にならない方」が臨床的に確実にいることや、巻き方の個人差・家族発生があること、一定数の方で再発が必ず起こりえること、等となります。順番にみていきましょう。

    1.10人に一人は巻き爪と云われる

    巻き爪は軽症のものも含めますと、「日本人の10人に一人」が罹患することのある病気とされています。裏を返すと、10人中9人の方は「ある程度の深爪をしたり」、「きつい靴などを履いても」、巻き爪になりにくい方もいるとも云えます。

    肌が弱く湿疹ができやすい人、疲れると吹き出物ができやすい方がいるように、何らかの刺激が加わると「巻き爪になりやすい方」がいるものと推察されます。

    2.家族発生することがある

    巻き爪の発生に「遺伝的要因」を指摘した論文はいくつか散見されます(原田ら2011)。巻き爪の治療をしていると、「親も巻き爪であった」とのお話もよく聞きます。

    家族歴で父母に過体重やきつい靴を履いたということが無いにも係わらず巻き爪を認めることがあるとの報告もあります(菅谷ら2014)。やはり、巻き爪になりやすい方がいるという一つの根拠になると思われます。

    3.爪の巻き方には個人差がある

    巻き爪の診療を多く行っていると「爪の巻き方」には個人差が大きいことに気がつきます。顔の輪郭や耳の形状に個人差があるように、爪の巻き方は個々で違ってくることが多いのです。

    全体に丸く巻く「ドーム型」、真中当たりの巻きが強い「三角屋根型」、端だけ折れ曲がって巻く「ステープル型」、全体にくるっと巻いてしまう「弯曲爪型」など巻く形状も様々です。

    爪の巻き具合にも個人差があり、軽度の巻き爪でおさまる方もいれば、巻いた爪が強く折れ曲がるように180度近く巻いてしまう方もいます。巻き爪になりやすい人がいることを支持する証拠の一つと云えるでしょう。

    4.足爪の親趾が巻きやすく他趾も巻く方がいる

    足爪が巻いてくる方の一部では、足趾の他指が巻いてきてしまう場合もあります。

    場合によっては足趾の全ての指で巻き爪が見られることもあり、遺伝性の巻き爪の患者さんでは、全体的に爪甲が菲薄な傾向が見られるとの報告もあります(菅谷ら2014)。

    中には、足の爪も巻いていて「手の爪も巻いてしまう」という患者さんもいらっしゃいます。

    5.一定数の方できちんと平らに治しても再発する

    矯正力が強い治療法などでは、半数以上の方が1回の矯正で治療が完了し、巻きが強い方でも2~3回の矯正でほぼ爪が平らになります。

    巻き爪矯正後も再発しない方も大勢いらっしゃる一方で、巻きが強い約3割の患者さんでは、「きちんと平らに矯正された後」から半年~1年程度で再度爪が巻いてくることがあります。

    やはり、「爪が巻きやすい体質」があるとしか云いようがありません。

  2. 巻き爪・原因・・・歩かない=母趾への適正な加圧不足

    巻き爪の原因のひとつとして、「歩くときの母趾への正しい加圧不足」が挙げられます。爪の正常な弯曲構造は、「爪の力学的な強度」を保ち、かつ「物を掴んだり、足趾で地面を踏み込む」ときの圧力を支えるようにできています。

    足趾の腹側でしっかりと均等に踏み込む動作が、爪をしっかりと広げることに繋がるのですが、「力が弱ったり」、「偏って力をかけてしまう」ことが、巻き爪が起こるきっかけとなります。

    例えば、ご高齢により歩かなくなると「爪がくるっと巻いてしまう方」が多くなります。爪が180度以上巻いてしまう「弯曲爪」の方はご高齢で歩く力が弱ってしまった方や高齢者施設で歩かない方によく見られます。

    爪の巻く力と歩いて趾腹から爪を広げる力がバランスを取っていたのが、歩かないことによって爪を広げる力がなくなってしまうと爪が急速に巻いてしまうのです。

    一方で、手指の先に怪我をしたり、足爪を深爪してしまい「痛みがあってかばって」力をかけずにいると、「気がつくと爪が巻いて」きてしまうこともあります。

    特に足の親指は、「歩行動作」の最後に足を蹴り出すとき、「体を前へ進む力」を発生させる部位であり、かつ足の5本指の中でも「足趾把持力」が一番強いところとなります。

    そのため、「体重を支えたり・前に蹴り出す力」に対抗するために、「母趾の爪甲」は他の足趾よりも大きく、かつ丈夫で「地面を支える力=巻く力」が強くなっているのです。

    母趾把持力(=母趾への適正な加圧)が不足してしまう原因には、

    • 年齢とともに筋力が落ちてくる
    • 寝たきりや何らかの病気、怪我などで足趾に体重をかけない
    • 歩き方の癖で「うき指」の状態である
    • 合わない靴を履くことで「足趾のクロー変形・爪の外反変形」によるもの

    などが挙げられます。

    実は、足趾の末梢部は、様々な微弱な外力が継続することで徐々に変形を起こすことが知られています。代表的なものでは「外反母趾・内反小趾」に加え、「槌指・ハンマートゥ・クロートゥ」などがあり主に合わない靴を長年履くことで徐々に変形を生じてしまいます。

    親指の爪も同じ現象が起き、わずかな加圧不足や加圧の偏りから変形が起こる「メカニカルフォース理論」が提唱されています。

  3. 巻き爪・原因・・・靴などの外的な刺激や過度な加重の偏在

    合わない靴による圧迫や外的な刺激、過度な加重の偏在も巻き爪の原因となります。

    江戸時代以前の日本人では、わらじ・草履などで足が外側から圧迫されることがなかったため、「巻き爪」の発生は少なかったとされます。

    明治時代以降に、「靴での生活」が始まり150年余り、今までオープンであった足趾の先が「靴での圧迫・刺激」が起こるようになり巻き爪が増えていったものと考えられています。

    靴での圧迫による巻き爪の発生機序には、

    • サイズの合わない小さな靴
    • 大きすぎて靴の中で足が動いて遊んでしまう
    • ヒールの高い靴
    • 甲の支えのないパンプス

    などで様々な方向から足爪が圧迫されることが巻き爪の原因と考えられています。

    例えば、サイズの合わない靴を履くこと自体が「足趾の先をしっかり均等に踏ん張ること」を邪魔してしまい、さらに横方向からの繰り返される外力が巻き爪の原因になり得ます。サイズの大きな靴も甲の支えをしっかりと作らないと返って、「靴の中で足が動いて」しまって、爪への刺激となってしまいます。

    さらに、「爪が適正な長さに切られて」おらず、足先の皮膚と同じ長さであったり、それ以上長かったりすると「靴での圧迫を受けやすい状態」となります。伸ばした足先より長めの爪部分は自然に巻きやすいのですが、靴での刺激も受けやすい形状となってしまうので、「爪の巻き」がいっそう助長されてしまうのです。

    爪が巻き始めてしまって「爪端が90度近く」巻いてしまうと、適正な足趾への荷重であっても「爪の巻き」が改善する方向には働かず、余計に爪が皮膚に喰い込むようになります。加えて、爪が巻くと「高さ」が出てきてしまうために、靴を履いたときに上方からの圧迫も受けやすくなり、痛みが増幅してきます。

巻き爪、陥入爪の治療方法

軽度な場合の治療

痛み止めや抗生物質の内服、軟膏やステロイド剤の外用を併用していきます。

巻き爪で炎症を起こしている場合は、巻き爪自体が軽度であっても、内服薬・外用薬だけでなく、爪の部分切除が必要になってきます。

治療方法としては局所麻酔をして、爪の端を切除します。

フェノール法

フェノールという消毒用の薬品を使います。

巻き爪の端を切除し、爪の根っこである「爪母(そうぼ)」をフェノールで破壊します。爪が厚い場合や、爪の湾曲が強い場合でも短時間で治療できます。

ただし、爪の幅が狭くなり、爪の生えてくる方向が少し変わったりする可能性があります。

プレート法

巻き爪に対して横方向にプラスチックや金属製のプレートを貼り、その張力で巻き爪を矯正する治療方法です。

爪に穴をあけたり、切ったり、ということがないので、痛みを伴わない治療方法です。

コットンパッキング法

巻いた爪が食い込んで痛い!
食い込みがそこまで強くない(軽症の)場合、コットンパッキングが有効です。

爪の変形が軽度な場合に適応となります。
食い込んだ爪の下にコットンを詰め込んで痛みを和らげます。
毎日繰り替えすことで爪が食い込まなくなっていきます。

マチワイヤー法による爪矯正

爪に小さな穴をあけて、そこに弾性ワイヤーを通して固定します。ワイヤーがまっすぐに戻る力を利用して変形した爪を矯正します。

マチワイヤー法の良いところ

全く痛みがなく、短時間で施術が終了します。
処置したその日から日常生活に支障なく過ごせます。

マチワイヤー法で起こりうること

爪が硬すぎて矯正ができなかったり、稀にワイヤーの力で爪が割れてしまったりすることがあります。
爪が短いと使用することができません。

陥入爪に対する治療

陥入爪の場合、軽症でしたら爪の切り方の指導を受けると改善します。
しかし重症になりますとBSスパンゲやペティグラスという矯正器具の使用やフェノール法が用いられます。

巻き爪のセルフケア・予防

巻き爪は、正しいセルフケアをすることで、予防したり改善したりすることができます。

医療機関での治療を受けたあとも、再発防止のためにはセルフケアは欠かせません。

深爪しない

不適切な爪切りが陥入爪の原因になります。

正しい足の爪の切り方ですが、長さは爪が引っかからない程度に、そして真っ直ぐに切ります。爪の両端を切り落としてはいけません。

適切な靴を選ぶ 靴を履く

サイズが合っていない靴、ハイヒール、先端が狭すぎるパンプスなどの着用は、巻き爪の原因です。

なるべく爪に負担がかかる靴は控えましょう。

正しい歩き方を心がける

かかとから着地して爪先を正面に向け、真っすぐ足を出す歩き方を習慣付けてください。

体重の乗せ方は足裏全体にいくようにして、足指をしっかり使って歩きましょう。

定期的なセルフチェック

巻き爪・陥入爪が再発していないか、切り方のチェック、生活習慣の見直しなども行いましょう。

まとめ

こちらの記事では巻き爪に関して解説をさせていただきました。

日常生活を過ごすうえで歩行時に痛むということは多大なストレスです。

当院では上記治療法の全ての治療法に対応しておりますので、症状が重くなる前にご相談ください。
適切な処置を受けて快適な歩行ライフを楽しみましょう。

気になる痛みや症状があったらお気軽にご相談ください

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