病気解説
肛門外科
粉瘤
「おしりが腫れて痛くなった」「膿が出ていた」といった症状から、肛門周囲膿瘍や痔瘻ではないかと判断される患者様が多いのですが、診てみたら粉瘤(ふんりゅう)だったというケースは非常に多いのです。
痔と粉瘤(ふんりゅう)の違いは
粉瘤は「アテローマ」とも言われる、良性腫瘍です。身体のどこの部分にも発生する可能性がありますが、おしりはその中でも発生しやすい箇所です。
痔瘻は「痔疾患」ですが、粉瘤は「皮膚疾患」、全く別物の病気です。
痔瘻は肛門の中に原因がありますが、粉瘤は肛門の外の皮膚に原因があります。
確かに症状が一見似ているので判別に迷うケースもあり、分かりにくいと思うので診断し適切な処置を行うことが大切です。
粉瘤は年齢に関係なく発症する可能性があります。
粉瘤の原因ははっきりとされていませんが、体質や肌質も関係があるのか何度も繰り返し発症する人もいます。
症状にもよるが、炎症を起こし痛みを伴う場合や繰り返し引き起こし不便を感じる場合など診断結果にて必要な場合手術を行います。
その場合、内容物の入っている袋を完全に取りきらないと再発します。
粉瘤の症状
粉瘤は、皮膚の下にできた袋(嚢胞)に、本来アカとなって剥がれ落ちる古い角質や皮脂などの老廃物がたまり、しこり(腫瘍)となったものです。
ドーム状に盛り上がり、粉瘤と間違えやすい「脂肪腫」は、触ると柔らかいのですが、粉瘤は硬いという特徴があります。
粉瘤が小さいうちは痛みも痒みもありませんが、粉瘤の中央部周辺にある黒い点状の開口部から細菌が侵入すると、炎症を起こし赤く腫れて痛くなります。
特におしりの場合は圧迫されることも多く、できた場所によっては「痛くて座れない」という事もあります。また、化膿がひどくなると、膿などが出て衣服に付く事もあります。
粉瘤の表面には開口部と呼ばれる袋の口があり、垢などが固まって口をふさいでいるので、黒い口があるように見えます。
また、つまむと中から白い物が出てくることがあります。
粉瘤の治療方法
粉瘤は治療しなければ治りません。
粉瘤は、老廃物がたまってできる腫瘍ですが、小さくても気にならない場合は少し様子をみてもよいとされていますが、自然に治ることはなく、放置しておいても徐々に大きくなって、炎症を起こします。
また、「臀部表皮嚢腫(粉瘤の医学名)から癌化した」というような学会報告もあるので、長期間、粉瘤を放置していた結果有棘細胞癌(皮膚癌)が認められたケースもあり、非常に稀なことではありますが、このような側面からも、粉瘤は根治のための手術によって除去しておくほうが安心です。
小さいうちに手術で袋ごと取り出すことを勧めます。
手術の流れ
基本的に、粉瘤を治療するにはすべての場合で手術が必要になります。
小切開摘出術(切除術)できるだけ小さく皮膚を切開し、そこから嚢腫(のうほう)※1を引っ張り出して除去後、皮膚を縫合する手術です。
※1血液や浸出液などの液体成分が溜まった袋状のもの
- 皮膚の上に、粉瘤のサイズや切除予定部をペンでマーキングします。
※ヘソ(黒い開口部)も一緒に取り除くため、切除予定部はヘソを中心にした紡錘形(レモンのような形)になります。 - 局所麻酔の注射をします。
- マーキングした切開線に沿って切開します。
- 嚢胞(のうほう)を周囲から剥離しながら、ピンセットでつまんで袋ごと引っ張り出します。
※炎症を起こしていない場合は、中身が詰まったままの嚢胞をきれいに取り出しやすくなります。炎症を起こすとこの袋が弱く、破れやすくなります。 - 嚢胞を取り出した後、皮膚を縫合して終了です。
ここまで所要時間は15~30分ほどです。 - 約1週間後に抜糸を行います。
ただし、肛門周辺の粉瘤に関しては便も付着し、肛門は伸縮するので基本的には開放創といって縫合はしません。
肛門周囲の粉瘤手術をするなら皮膚科ではなく、肛門科を受診してください。
痔瘻と勘違いされることの多い「粉瘤」という病気は、適切に処置を行えば痛みもすぐに和らぐのでご安心ください。
気になる痛みや症状があったらお気軽にご相談ください
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