病気解説

整形外科

動物咬傷(犬・猫に手を咬まれた)

犬や猫に手や足を咬まれた場合の対処法、ご存じでしょうか?

現在、日本では約2割のご家庭で犬や猫が飼育されており、家族の一員として大事に育てていらっしゃることと思います。

しかし、どんなに大事にしていても、驚いた拍子や怒った拍子に犬や猫が飼い主の手を咬むということは、残念ながら起こり得ます。

余談ですが、診察していると、理由は不明ですが、夏に多いような気がします。

こちらでは、犬や猫に咬まれた場合の正しい対処法や絶対にしてはいけない対処法をお伝えします。

動物の咬み傷の特徴

動物に咬まれた傷と、通常の切り傷との大きな違いは、咬まれたことで動物の口の中の細菌が傷口から体内に入ってしまうということです。

犬に咬まれた場合、4~20%で感染が起こると言われていますが、猫に咬まれた場合は、60~80%という高確率で感染が起こります。

なぜかというと、猫の牙は細く鋭いため、傷が深くなる傾向があり、また、パスツレラ菌という細菌を保有しているためと考えられています。

動物の牙によって傷口深くまでパスツレラのような細菌が押し込まれることで、通常の切り傷のような表面の感染だけでなく、骨にまで感染が到達し、最悪の場合、骨髄炎を起こし、骨がとけてしまうということや、敗血症(はいけつしょう)という血液に細菌が入り込む場合も実際にあり、最悪の場合は死に至るケースもあります。

応急処置

では、犬や猫に体を咬まれた場合、どう対処すればよいのでしょうか。

まず、傷口を水道水の流水でしっかりと5分以上洗浄することが重要です。

傷が深く、出血も多いので、まず止血をしてしまいがちですが、上に述べたような恐ろしい感染を防ぐためにも、傷口の細菌をできるだけ洗い流すようにしてください。

そのうえでタオルなどで抑え、医療機関を受診してください。

では、犬や猫に咬まれた場合は何科を受診するればよいでしょうか?

何科を受診するべき?

整形外科を受診してください。

皮膚が傷ついているので皮膚科と思われるかもしれませんが、上にも述べたように、動物の咬み傷は深く、骨に到達する場合もあり、レントゲン検査などが必要になることもあります。

ですので、整形外科を受診するようにしましょう。

絶対にしてはいけない処置2つとは

(1)傷を密閉すること

動物の場合は圧倒的に細菌数が多いので、感染を防ぐことが治療の一番のポイントになります。

通常の傷の場合は、早くきれいに治すために、”湿潤環境”という治療が一般的になってきました。

傷を乾かさないような被覆材を用いて湿度を保ったまま治すという方法です。

しかし、動物の咬み傷の場合は、傷を完全に覆うような被覆材を用いると、傷の周りで細菌が増殖し、感染が悪化します。

膿むという状態になり、治りが遅くなるだけでなく、最悪の場合、骨や血管内にまで感染が広がるという事態に陥るのです。

ですので、動物に咬まれたら、その傷は絶対に密閉しないようにしてください。

(2)自宅で様子を見ること

もう1点、絶対にしてはいけない処置は、「自宅で様子を見る」ことです。

よくあるのが、「小さな傷で大したことないと思って、家でばんそうこう貼って様子を見ていたら、どんどん腫れがひどくなってきて、痛みも強くなってきた」と言って受診されるケースです。

小型犬や猫の咬み傷は、小さいこともあるので、すぐに治ると自己判断される方がいますが、上にも述べたように、医療機関で適切な治療をしなければ、感染は高い確率で起こりますし、時間が経つほど治療は侵襲的なもの(膿を出す手術など)になりますので、どんなに小さく見える傷でも動物に咬まれた場合は、できれば当日中に医療機関を受診してください。

ふじた医院では、犬猫に噛まれた時にはどんな治療をするのか?

洗浄や消毒を行い、必要であれば膿を出すための穿刺や切開を行います。

そして、傷を縫合することなく、開放したままにして、感染を防ぎます。

感染予防のため、抗菌薬の注射や薬も処方されます。皮膚や組織の欠損がひどく再建術が必要な場合は、感染が落ち着いてから行います。

傷の状態や抗菌薬の効果を確認するため、初診日から毎日医師が傷の状態を確認します。

よくあるご質問

Q1:狂犬病ワクチンを打っている犬でも咬まれたら危険ですか?

はい、危険です。
犬は狂犬病以外の細菌やウィルスも多く持っていますので、狂犬病のワクチンさえ打っていれば安心というわけではありません。

Q2:咬んだ犬が狂犬病のワクチンを打っていないようです。どうすればいいですか?

もし野良犬など狂犬病のワクチンが打たれていない犬にかまれた場合は、咬まれた人が狂犬病のワクチンを打つ必要があります。

気になる痛みや症状があったらお気軽にご相談ください

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