病気解説
肛門外科
痔・肛門痛
気恥ずかしさもあり、たとえ辛くても打ち明けづらいと思ってしまいがちな肛門の痛み。
この記事ではそんな肛門の痛みに関するあれこれを解説していきます。
もし、思い当たる節がある方は勇気をもって病院へ受診してください。
ふじた医院では、女性医師も診察しています。診察日等気になる方は一度お問い合わせください。直接来院される方、アクセスはこちらです。
人には聞きにくい、肛門が痛くなる理由
肛門付近が痛くなるには色々な理由がありますが、この記事では肛門痛が起こる症状の原因や病気について解説していきます。
肛門痛とは
肛門痛は肛門付近で感じる痛み全般を指す言葉です。
肛門痛には、
- ズキズキ、ジーン、チクチクといった痛み
- 痛みが継続する場合
- 突然痛みを感じてまた消失する場合
- ズーンとした鈍痛
- 神経痛の発作性のような痛み
- いつも便が出たい感じ
などがあります。
痛みとして注意が必要なのは、直腸や肛門の癌などの悪性腫瘍がある時です。
これら肛門痛を大きく分けると以下のような病状のものがあります。
- 排便時に痛みを感じ出血を伴うもの
- 出血はないが排便時以外に鈍痛を感じるもの
上記のように病状の幅が広いのは、痛みを引き起こす原因となっている病気が異なるためです。特に排便時以外に鈍痛を感じるものについては、様々な原因が考えられるため、早めに医師の診察を受けることをおすすめします。
ふじた医院では、女性医師も診察しています。診察日等気になる方は一度お問い合わせください。直接来院される方、アクセスはこちらです。
鈍い痛みがある肛門痛
鈍い痛みの肛門痛の症状
鈍い痛みの肛門痛には以下のような症状が見られます。
- 排便時には痛みや出血がない
- 裂肛などとは違う鈍い痛みを感じる
- 起床してから時間が経つと痛くなる
- 長く立ったり座ったりしていると痛みだす
- 睡眠中は痛みがない
排便時に痛みや出血を伴うような肛門痛と大きく異なるのは、起床してからしばらくすると痛み始めることです。例えば午前中にした場合は夕方くらいから痛み始め、だんだんと痛みが強くなっていきます。
また、長く立ったり座ったりしているとさらに痛みを感じやすくなるのも特徴です。
鈍い痛みの肛門痛の原因
排便時に痛くない肛門痛の原因として考えられるのが、直腸粘膜脱の悪化です。直腸粘膜脱とは、直腸を支えている組織が弱くなり、粘膜が肛門に下がっていく病気のことです。
直腸粘膜脱になると、下がってきた粘膜が陰部神経という神経が刺激し、痛みを生じることがあります。もともと神経痛などがあった場合は、なおさら痛みを感じやすいです。
また、内痔核があると肛門痛が悪化しやすくなります。内痔核に血が溜まって鬱血すると、内痔核による腫れが大きくなり、直腸の粘膜を引っ張ってしまいます。
鈍い痛みの肛門痛を感じることがある場合は、まずは直腸粘膜脱を疑ってみましょう。
肛門の痛みから推測される症状
「排便の時に痛い」、「排便に関係なく痛い」、など痛みの種類はさまざまですが、肛門に痛みがある場合は痔などの肛門の病気が疑われます。
排便の際に痛みがあって、出血も少量ある
裂肛(きれ痔)が疑われます。排便が終わった後、しばらく痛みが持続する場合もあります。
排便と関係なく痛む
排便と関係なく、肛門のまわりが腫れ上がって痛み、38~39℃の高熱を伴う場合は、肛門周囲膿瘍(こうもんしゅういのうよう)※の可能性があります。
※肛門周囲膿瘍:直腸・肛門周囲に膿(うみ)がたまった状態。進行すると痔瘻(じろう)となる。
その他の痛み
肛門周囲にあずき大の血豆ができ、激しい痛みがある場合は、血栓性外痔核が疑われます。また、自律神経の乱れやストレスからくる肛門痛もあります。
痔について
肛門痛の原因として、色々あげてきましたが、肛門痛の原因として一番多いのは痔です。
痔とは肛門や肛門周辺に起こる病気のことで、代表的なものとして、痔核(いぼじ)、裂肛(きれじ)、痔瘻(あなじ)の3種類があり、痔核はさらに内痔核と外痔核に分かれます。
内痔核
痔核は、直腸の下や肛門にある静脈を含めて肛門を閉じる役割をするクッション部分がうっ血(血流の障害により静脈内の血液がたまった状態)して膨らんだもので、この痔核が歯状線より内側にできたものを内痔核と呼びます。
内痔核は痔の中で一番多く見られます。便秘やトイレ時間が長くて排便時のいきみが強い、長時間同じ姿勢をとる、妊娠や出産がきっかけで起こりやすくなります。
症状としては痛みはほとんどなく、排便時に出血したり、肛門から脱出したときに、肛門から飛び出してくる感じや異物感があります。
進行すると、脱出しても排便が終わると戻る状態から常に痔核が脱出し指で押さえなければ戻らなくなります。最終的には指で押さえても戻らなくなります。
外痔核
うっ血した状態が肛門の歯状線より外側にできたものをいいます。血まめができた状態を血栓性外痔核といいます。
原因は便秘や下痢、アルコールや辛い物の摂り過ぎ、長時間歩き回ることや座りっぱなしの事が多く、冷えやストレスも原因の1つと考えられます。
症状としては腫れて痛むことが多いですが、出血は少ないです。
裂肛
肛門の皮膚が切れたり、裂けた状態です。
原因として、便秘などによって硬い便を無理に出そうとして、その衝撃で切れることが多いのですが、慢性的な下痢症状による炎症としても起こることもあります。便秘がちな女性に多く見られます。
症状として排便時に激しい痛みと出血があり、排便後もしばらくは痛みが続きます。
進行すると裂肛を繰り返すことで裂け目が深くなって炎症が起き、潰瘍やポリープができて肛門が狭くなる(肛門狭窄)ことがあります。
痔瘻
歯状線にあるくぼみに大腸菌などが感染すると炎症を起こし、化膿して膿がたまります。
この段階を肛門周囲膿瘍と言い、この症状が繰り返されることによって細菌の入り口と膿が皮膚を破って流れ出る部分まで1本のトンネルの様に貫通します。この状態を痔瘻と言います。
原因として下痢やストレスによる免疫力の低下などがあり、肛門括約筋の強い男性にやや多い傾向があります。
症状として肛門の周囲の皮膚が腫れて痛みを伴い、時には熱が出ることもあります。また、痔瘻まで進むと膿が出て下着が汚れます。痔瘻の治療は手術になります。
痔の原因
最大の原因は便通異常、すなわち下痢と便秘です。
体質だからとあきらめるのでなく改善する努力が必要です。
便秘
便秘は痔の大敵です。便がなかなか出にくいために、トイレにいる時間が長くなり、必要以上にいきまなければなりません。
いきむことで肛門周囲の血管に負担をかけ、うっ血して痔核ができたり肛門周囲が切れて裂肛になったりします。また硬い便が肛門の粘膜をこすることで傷がつき、そこから雑菌が入り込んで炎症を起こす原因にもなります。
下痢
下痢も痔の原因になります。特に水の様な水様便や慢性的な下痢は肛門に圧力をかけていることになり、さらに肛門粘膜の炎症を起こしやすくします。その為に痔核や裂肛、さらに痔瘻が起こりやすくなります。
便通異常は正しい生活習慣で治せる場合がほとんどです。食生活や普段の生活、ストレスをためないなど見直してみましょう。
痔の対処法
痔の症状が見られた時に自分でできる対処方法があります。
- 排便時にひどく出血しても、自然に止まるものがほとんどですが、止まりにくい場合は肛門を圧迫するように10分程度押さえておいてください。
- 肛門部のうっ血を防ぎ、清潔にするためには、シャワー浴ではなく入浴(湯船につかる)し、お尻を温めると和らぎます。
- 普段からの生活の改善も必要です。
- 便通を整えできるだけ肛門に負担をかけないようにします。
- お尻の周囲が腫れて痛む時は患部を冷やします。
- うつぶせの姿勢で患部にタオルを置き、その上から冷やすと痛みがやわらぎます。肛門の周囲から膿が出ているときは排便後、座浴でお尻の周辺を洗いましょう。
- 市販薬の使用も効果的と思いますが、あくまで症状が軽い場合や病状が分かっている時で、症状がひどくなる前に病院に受診し、専門医に診てもらいましょう。
- 不規則な生活や疲れ、ストレスなどで再発する可能性も高いので生活習慣を変えないと再発する恐れがあります。
痔になりやすい人
痔は男性に多いと思っていませんか?
実は痔で悩んでいる人の割合は男女半々なのですが、女性は痔で悩んでいても恥ずかしいという気持ちから病院へ行かなかったりする人が多く、症状を悪化させてしまうことも少なくありません。
女性が便秘になりやすい原因
- 男性に比べて女性の方は腹筋が弱く、便を押し出す力が弱い。
- 会社や学校、外出先などで恥ずかしいという気持ちから便意を我慢しがちである。
- ダイエットで食事制限をし過ぎて十分な便が出ない。
- 冷え性のためお尻や腰が冷えやすい。
- 月経前に分泌される黄体ホルモンが腸の運動を抑制する。
といったことが考えられます。
また、女性は妊娠、出産をきっかけに痔になる人が多いようです。
それは、妊娠中の赤ちゃんの重みによる「うっ血」や出産時の「いきみ」などが原因の多くで、出産後の授乳や育児疲れから便秘やストレスにより痔になる人もいます。
妊娠時、分泌が盛んになる黄体ホルモンという女性ホルモンの1つが腸の動きを抑制し便秘ぎみに、だんだん大きくなる子宮が腸を圧迫し血管循環が悪くなってうっ血が起こり、便秘もしやすくなります。
出産時はいきみの刺激に加え、裂けたり切開した後の縫合によって肛門のしまりが悪くなることがあります。出産後、授乳中、母乳に水分を奪われるため水分不足で便が硬くなり、便秘が起こります。また育児疲れから便秘ぎみになります。
男性が痔瘻になりやすい原因
男性に多いのは痔瘻の主な原因である下痢です。
下痢はストレスやお酒の飲みすぎで起こりやすくなります。一般的に男性は仕事上のストレスや飲酒の機会が多くそれが下痢の原因の一つの要因と考えられます。
痔の予防
痔の最大の原因である便秘や下痢の改善は生活習慣を見直すことで解消することが可能です。
生活習慣
長時間、座りっぱなしや立ちっぱなしという状態をなるべく避けましょう。
時々姿勢を変え、合間も見つけてストレッチなどで体を動かしましょう。
疲れやストレスがたまると免疫力が落ち、痔が悪化しやすくなります。リラックスしてストレス発散しましょう。
適度な運動はストレスの解消に役立つだけでなく、腸の運動を活発にして排便を促す効果があります。
冷えると肛門の筋肉が緊張し、血液の循環が悪くなって痔に悪影響を及ぼします。
毎日入浴して血行をよくし、体や腰回りを冷やさないような工夫をしましょう。また、夏場の冷え性も増えています。クーラーの冷え過ぎにも注意しましょう。
おしりに負担をかけない排泄
間違った排便習慣は痔の原因となります。まず大切なのはお尻に負担をかけない排泄を心がけることです。
便意の我慢を繰り返していると便意を感じなくなり、直腸に長く便がとどまってしまいます。そうなると便の水分が吸収されて硬くなり、排泄の際に肛門に負担をかけます。トイレで長時間いきむのは肛門に負担をかけることになります。
排便後はお尻を優しく拭き、シャワートイレを使い、入浴で肛門をきれいにしておきましょう。
食生活の見直し
便秘を防ぐには食物繊維の多い食品をしっかり摂ることです。
食物繊維は腸内の水分を吸収して膨らむので、便の量を増やして適度に軟らかくしてくれます。野菜やいも類、豆類、海藻、きのこ類、ドライフルーツ、こんにゃくなどが食物繊維の多い食品です。
朝食を食べましょう。
腸が活発に動き出し、便意が起こりやすくなります。
起床直後に冷たい水や牛乳をコップ1杯飲むのも腸の刺激になります。
症状のある時はアルコールや香辛料は避けましょう。
刺激物は肛門を刺激してうっ血の要因となり症状を悪化させてしまいます。
整腸作用のある乳酸菌や乳糖、オリゴ糖を積極的に摂りましょう。
肛門から出血があり、てっきり痔と思っていたという人が多いかもしれません。
ところが、受診して結果大腸がんだったというケースもあります。肛門からの出血という点では痔の症状と一致しますが、大腸がんや潰瘍性大腸炎、大腸ポリープなど他の病気の可能性も考えられます。
痔の検査
痔核の場合
痔核は、病歴をうかがい、肛門診察によって状態を確認し重症度を判断します。
肛門診察の内訳は直接患部を診る視診、肛門内の瘤の有無を確認する触診・指診の後、肛門鏡検査で肛門内の観察を行います。
痔核の重症度は、次の4段階に分類されます。
- Ⅰ度:痔核は存在するが、肛門からの脱出はしていない
- Ⅱ度:排便時に肛門外に脱出するが、自然に戻る
- Ⅲ度:排便時に肛門外に脱出するが、指で戻すことができる
- Ⅳ度:常に肛門外に脱出した状態で、戻すことはできない
裂肛の場合
裂肛は繰り返すことで慢性化しているケースも少なくありません。視診、指診を行うことで、肛門が狭くなっていないかどうか、いわゆる肛門狭窄と呼ばれる状態の有無を確認します。
痔瘻の場合
痔瘻は、前段階として肛門周囲膿瘍がありますので、肛門診察を行い現在の状態や経過を確認します。
痔瘻と診断を下した場合、トンネルの位置を正確に把握するため、肛門エコー検査やMRI検査を行うことがあります。
痔の治療法
痔核の治療法
痔核の場合、まずは軟膏や座薬、飲み薬などの薬物治療を行い、併せて生活習慣の改善を指導します。特に排便習慣の改善は大切です。
朝、排便を行わなければならないと考え、無理にいきむことが痔につながります。排便は朝無理に行わなくても、一日一度自然なタイミングで無理なく行えればOKです。健康のためと朝無理に排便を行うことが、痔につながってしまっては本末転倒です。
痔核は多くの場合、薬物治療と生活習慣の見直しで改善しますが、改善が見られない場合は手術によって瘤を取り除きます。
裂肛の治療法
排便コントロールや薬物治療で便秘の改善を図り、慢性化し肛門狭窄を患っている場合は手術を検討します。
痔瘻の治療法
痔瘻は薬物療法では根治できず、手術が必要になります。膿が皮膚を突き破ってトンネルができることが痔瘻の特徴ですが、そのトンネルができた場所によって手術方法は異なります。
今回は肛門痛と痔について解説させていただきました。
気になる症状がある場合は早めに専門医に受診しましょう。
また、健康を維持するためにも定期的に検診を受けましょう。
もし、思い当たる節がある方は勇気をもって病院へ受診してください。
ふじた医院では、女性医師も診察しています。診察日等気になる方は一度お問い合わせください。
直接来院される方、アクセスはこちらです。
気になる痛みや症状があったらお気軽にご相談ください
WEBでお問い合わせ